あじゃみんのブログ

美味しいものや、経営する雑貨店のこと、女性の心身の健康について、その他時事ネタなど好き勝手に書いているブログです。

小説 蓬莱探偵事務所

病院にいればいるほど、元気がなくなるのは何故?

検査用の血液を取ったりした以外は、2日間ゆっくりと休んだ駒子は、3日目に部屋を移ることになった。 だだっ広い4人部屋で部屋代は半額になるといわれたのだが、なぜかその部屋は空っぽで、蓬莱さん専用特別室ねと看護師に笑われた。 どこでも好きなベッドを…

事件の推理と駒子の入院

「美和子さんは、紅茶でしたよね。ハイ」 「おー、このカップ、ローゼンタールね」 「あら、ご存知ですかぁ?先生のコレクションなんですよー♪」 愛子は嬉しそうに言うと、弓なりになっている取っ手のついたカップを美和子の目の前に置いた。 「はい、先生は…

あっけない結末と美和子の叫び

「・・・聡子さん、どうなったの?」 駒子の力でフォートカニングパークにいた全員が、高井聡子に起こった出来事を知り、力尽きた駒子を抱えるようにして、美和子が聞いた。 「もう・・・無理。力が強すぎるのよ」 駒子は地面に膝をついてやっと息をしている…

聡子の独白3 ~シンガポール大検証~

歴史に疎い私には、藤間さんの話は衝撃的でした。 ***** 真珠湾奇襲攻撃の1時間前、つまり1941年12月8日未明に、日本陸軍はマレーシアに上陸し、イギリス軍の要衝だったシンガポールに向けて南下し、翌年2月にシンガポールに到達し、イギリス軍を降伏させた…

聡子の独白2 ~1942年~

眠れない夜を過ごし、窓から朝日が差し込んできた頃、ずっと続いていたカシッという音が消えました。 何をするにしても、あの絵の側を通ることになるので、長いこと動けずにいましたが、やはり夜と違って明るいということは、人を元気にするのですね、思い切…

聡子の独白1 -はじまり-

シンガポール、クラークキー駅から徒歩5分程度の場所に会社が借りてくれたコンドミニアムがありました。 キッチンもわりと広めだし、リビングとベッドルーム、それにウォークインクローゼットのある1人用のコンドでしたけど、荷物もたいして持っていない私に…

闇へ誘う光

フォート・カニング・パーク。 シンガポールの創設者であり、イギリスの植民地建設者であるトマス・スタンフォード・ラッフルズ(Sir Thomas Stamford Raffles、1781年7月6日 - 1826年7月5日)がシンガポールに入島し、邸宅を構えたことで知られている。 ラ…

最後の場所を訪ねるのは、幽霊探偵の仕事です。

高井の妹、聡子の死の真相は、聡子の遺体が見つかったフォートカニングパークに行って確かめることになった。 駒子がそういうからには、聡子をあちらの世界に連れて行ったのは、この世の者ではないということになる。 科学的な説明は何もつかないが、高井は…

原因は往々にして、複雑なようで単純なものです。

「なんだぁ~、そういうことだったのか」 思いがけず現れた高井道隆に誘われ、浅井美和子と蓬莱駒子はリージェントホテル2階にあるレストランで朝食ビュッフェを食べに来ていた。 とはいえ、美和子は二日酔いで食べ物どころではなく、フルーツジュースやコー…

フラッシュバック

「なんだぁ~つまんない」 「何が?」 「薔薇の花びらのお風呂が見たかったのに」 「あじゃみんさん、嫌だっていったじゃない!」 「私は入りたくないけど、こまりんさん入るでしょ?どんなもんか見物したかったのよ」 「バスタブに薔薇の花びらが浮かんでる…

暗闇からきたもの ~後編~

夜が明けて、明るくなってからは恐怖心もやわらぎ、人間とは皮肉なものでお腹が空いたと一旦解散して部屋に戻って朝食会場に集まることになった。 食欲が満たされると、だんだん元気になってきて、バスに乗って出発する頃にはみんなの中になんとなく「今まで…

暗闇からきたもの ~前編~

それは、5年前のある日、浅井美和子は続けていたWebデザインの仕事でやっと独立できたところだった。 徐々に仕事も増え、なんとか食べていかれるくらいにはなったので、自分にご褒美と北海道旅行を計画した。 本来なら海外なのだが、せっかくのご褒美なので…

探偵といっても、ちょっと変わってるんです。

「という訳で、その時はまだ具体的な話はなくて、亡くなった妹さんと話がしたいから駒子さんに頼んでくれってことで終わってたの」 蓬莱探偵事務所のヨーロッパ風のゴージャスなソファに座って、美和子は長い話を一旦終わらせた。 「ふーん。でも、結局詳し…

レイ・ガーデンにて

美和子が部屋でくつろいでいると、電話が鳴った。 「ハロー」 一応、英語で出てみる。 「あっ、美和子さん、こんにちは高井です」 懐かしい声だった。 「お久しぶりです。高井さん、今どちら?」 会った時でいいのに・・・と思いながらも、それからひとしき…

アシスタントはメイド

ギギギ・・・と音がしそうな古めいたドアではあったが、案外すっと開いた。 「こんにちは・・・えっ?」 そこはまさにヨーロッパ調の家具の並んだ“サロン”とでも呼ぶべき煌びやかな部屋だった。 美和子は、大時代的なドアの向こうの別世界に目を見張った。

蓬莱探偵事務所へようこそ

対岸にみなとみらいの商業地区が見える歩道を歩くひとりの女。なんだか疲れた顔をして歩くその女、浅井美和子は、最近、この地区に引っ越した友人を訪ねて行く途中だ。 ガラガラとスーツケースを引きずりながら、途中汗を拭くために一度だけ立ち止まった以外…