どのくらい時間が経ったのか、あまり定かではないのですが、なんだか自分を呼ぶ声に気が付くと、以前にも見たことのある外科医が宇野検事と一緒に立っていました。
血液検査の結果は出ていたようで、その紙を持って見ながら、私に話しかけたのです。
「あじゃみんさん、えーっと、この状況だとCTとか撮った方がいいんじゃないかなぁ」
(`Д´)「僕もそう言ったんですけどぉ」
すかさず宇野検事が叫びます。
『だから、なんでそんなに怒ってるわけ?宇野検事・・・』
そう思いながらふたりを見ていたら、目の前のブルーのユニフォームの外科医は、小柄で快活な感じが八嶋智人演じる遠藤事務官そっくりです。
顔が似ているというより、あの雰囲気が似ている感じ。
『HERO脇役2名登場』
そんなことを考えながら、黙ってみようかプチ作戦も実行してみました。
すると、私が返事をしないからか、遠藤事務官(医者だけど)は続けました。
「まぁ、この数値を見ると、確かに単なる発作だと思うんですけどねー。画像とか見ないと、痛みを取る以外に医者はなーーーーんにもできないんですよぉ」
『いや、だから、とりあえず痛いのを止めておいてくれればいいんですけど』
どうやって説明したものかと、ぼーっとした頭で考えていると、遠藤事務官は続けて
「何がそんなに嫌なんですか?被爆ですか?」
と言いました。
『・・・・また被爆・・・・』
きっと被爆が怖いからレントゲンとかCTとかあまり撮りたくないとか言う人、やっぱり多いんだろうなぁ~と。
もういい加減被爆はいいよと思ったのですが、さっきついた小さな嘘のせいで、別のところに話を持っていくチャンスを逃しました。
仕方がないので、被爆で乗り切ることにします。
「・・・・はい。レントゲンとかもバチバチ撮られちゃって」
そういう私に遠藤事務官は、「最近、多いんですよねー、そういう人。まぁ、わかりますけど、被爆っていっても、レントゲンとかCTのなんて普通なんですけどねぇ・・・。まぁ、どーーーしても嫌だというのなら、無理にとは言えませんけどっ」といって、私の顔をじっと見ました。
『普通の被爆って意味わからないんだけど・・・入院のご案内って冊子に、患者の意思を尊重しますって書いてなかったっけ・・・』
ちらしはすぐに捨ててしまう私ですが、こういうのは結構隅から隅まで読んだりするんです。
しかし、ここまで言われたら被爆路線で突っぱねるのは無理じゃないかとあきらめの気持ちになり、別にCT撮ってどうなるもんでもないので、もういっかって気持ちになりました。
普段の私には、あり得ないことです。
自分で納得もしていないのに、折れてしまう・・・。
ちゃんと自分が思っていることを説明したうえで、それでもどうというのであれば同じ諦めるのも気持ちが違います。
今回は、最初についた小さな嘘が、私の首を締め付けたのでした。
「わかりました。お願いします」
観念してそういうと、遠藤事務官が差し出す同意書にサインをして、やはり車いすでCTの撮影場所に向かいました。
前回印象深かった三瓶さんは健在で、寝かされて大きな輪っかの中に入ると、「では、これから造影剤を注入します。液が入ったら、体中が熱くなってくると思いますが、入り終わったら治まりますので、心配しないでください」と一言一句違わないせりふを披露してくれました。
当然といえば当然ですが、血管は破れてなかったみたいですけど。