①から読んでね。
「すみませんでしたねぇ」
回送タクシーを追いかけて、女の霊を祓った(完全には祓えていませんが)後、私を乗せた運転手さんはそう謝りながら車を走らせました。
その後の話によると、運転手さんと先ほどの回送タクシーの運転手さんは同じ会社で仲の良いお友達なんだとか。
ここから私を乗せた運転手さんをAさんとしますね。
回送の運転手さんは小さいお子様と奥様との3人暮らしで、ある日、同じ団地内で引越しをしたようで、Aさんが引越し祝い?を持って、回送運転手さんの引っ越した新しい部屋を訪ねたそうです。
行って見ると、同じ団地内で、しかも部屋の間取りも同じ・・・いったい何故引っ越したんだ?と疑問を感じずにはいられません。
Aさんは、素直にその疑問を口にして、「どうしたんだよ」と聞いてみました。
回送車の運転手さんの話
いやね、自分は特に気にしてなかったんだけどさ、3歳の子供が毎晩布団の上に乗って遊んでたんだよ。俺の上に乗ってきたりしてさ・・・。
こっちは疲れてるし、重たいなとは思ったけど、小さい子供のことだからって寝ちゃってたんだよね。でもさ、ある日寝ていたら、やっぱり子供が乗ってきて、その時は腰が痛くて痛くて我慢できなくて、「いい加減にしなさい」って怒っちゃったんだよ。
今まではそんなじゃなかったのに、その日は胸のあたりまで登ってきて、苦しいのもあったんだ。ちょっときつめに叱ったのにやめないでグーッと胸のあたりにまた登ってきたから、ばっと起き上がったんだよ。
「えっ!」
目の前にいたのは子供じゃなくて、真っ赤な口紅をつけた髪の長い女で、両手をぐっと俺の胸に伸ばしてきて、押さえようとしてたんだ。
「うわぁ~!!」
叫びながら思い切り払ったら、消えてったんだよね。
でもさ、その頃女房はうつ病みたいな感じになってたし、子供は喘息で病院通いしてたから、もしかしたらその女のせいなのかもって思って、引っ越すことにしたんだけど、ちょうどこの部屋の空きがあるのが分かって、越したって言うか移動してきたんだよね。
同じ団地だから、どうかなと思ったんだけど、ここに越してからは、女房も元の明るい女房に戻ったし、子供の喘息も治まったから、やっぱりあの女のせいだったんだと思うよ。
お祓いなんてしてないよ。
もう、とにかくあの部屋を出るのに必死だったから・・・。
次の人が入ったかはわからない。
気にすると、どうしても見に行きたくなりそうだからね・・・。
Aさんは、この話を聞いて、なるほどと思い、帰りに以前の部屋の前まで行ってみたそうですが、その時に壁から壁へ髪の長い女性が消えて行ったのが見えたそうです。
Aさんは、「そういうことがあったから、あいつの事はいつも心配しているんだ」と言っていました。