落ちぶれた俳優といわれたミッキー・ロークが完全にスターの座にカムバックしたと言われる作品「レスラー」。
アカデミー賞主演男優賞ノミネートをはじめ、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞の主演男優賞など、数々の賞を総なめにし、数えてみればその数54。
本国アメリカでは、スタジオ側の大反対を押し切ってミッキー・ロークを主演に起用したダーレン・アロノフスキー監督のわがままが原因で制作費の大幅減額があり、上映についてもメジャーな映画館での封切りが出来ず、当初はわずか4館でのスタートだったそうです。
スポンサーや関係者としては、すっかり過去の人となったミッキー・ロークをなぜ主演に?というのも分からなくはありません。
私もこの映画で再度注目されるまでは、多少の映画出演はあったのでしょうが、彼の出演作など観る機会もなく、すっかり存在を忘れていたほどです。
ボクサーをしていたために顔にダメージを受け、さらに整形の失敗でかなり顔も崩れてしまって、かつての「美形俳優」はどこへやら。
これでは、仕事は減って当然という状況だったようです。
2000年代に入って出演したいくつかの映画でも高い評価を得ていましたが、主演にとまではいかなかったのが、今回スタジオ側が提示したニコラス・ケイジではなく「どうしてもミッキー・ロークで」というのは彼の人生がこの物語の主人公にオーバーラップしていたからでしょうか。
とにかく監督が譲らなかったので、制作費も大幅に削減されてしまい、低予算で撮らなくてはならなくなったそうです。
それでもなお、出来上がったこの作品が全世界で評価を受けたのは、とことんまでリアルに徹した試合シーン(これはもう、目を背けたくなるようなリアルさで、本物のレスラーたちが大勢出演し、本当に試合をしているのです)とミッキーの人生生き写しのような迫真の演技、この二つの要素が大きかったと思います。
話の運びは地味なのですが、それが逆にグイグイと観る者を引き込んでいきました。
また、本物のレスラーたちが繰り広げるロッカールームでのアドリブでのやり取りや、体を作るためのドラッグの数々、そして日本でいえば「やらせ」にあたる試合の段取りを決めるやり取りなど、ここまでいいの?ってくらいリアルに描かれていました。
よく色々なスポーツのやらせ疑惑なんてのが話題になるときがありますが、アメリカではレスリングはエンタメとして認知されているから、大丈夫なんでしょうか?
ちょっとここは笑えました。
最後のシーンについては、これで良かったのか、もっと先を見たかったかも・・・という感情が交差しましたけど、このラストだから良かったというのは、いえると思います。
見返したいような、見返したくないような・・・。
本格的なプロレス映画というだけでは終わらない、じ~んと胸に来る映画でした。
ヒューマンドラマという要素が強いので、ちょっと目を背けたくなるシーンは多いのですが、ぜひ女性にも観ていただきたい映画でした。
大満足です♪
<ストーリー>
かつて一世を風靡したトップレスラーだったランディー(ミッキー・ローク)は、全盛期から20年経った今ではすっかり落ちぶれ、アルバイトで細々と生計を立てながら週末にはリングに上って暮らす日々を送っていた。
一人娘とは疎遠になり、密かに思いを寄せるストリッパーともなかなかうまくいかず、孤独の中で生きる彼にはリングでの試合だけが自分の存在意義を感じられる場所だった。
ある日、長年のステロイドその他の常習による弊害が彼を襲い、心臓発作で倒れた。
医師からの勧告で引退を決意するが、プロレスしか生きるすべをしらない彼は、徐々に孤独の度合いを深めていった。
FoxSearchlight/Photofest/ゲッティイメージズ
レスラー
原題: THE WRESTLER(2008)
上映時間:109分
監督: ダーレン・アロノフスキー
ミッキー・ローク(ランディ・ロビンソン)
マリサ・トメイ(キャシディ)
エヴァン・レイチェル・ウッド(ステファニー)