2009年10月9日(金)こまりん
私、蓬莱駒子、通称こまりん(注:あじゃみんのストーリーに出てくるこまりんさんの名前/仮名)が、いわゆる「見える」人になったのは、まだ幼い頃のことでした。
小さい頃、両親と年の離れた兄が先祖のお墓参りに行くとき、なぜか私だけ誰かと留守番で連れて行ってもらえなかったんです。
小学校に上がった頃でしょうか、両親が「もういいだろう」とか話していて、なんだろうと思っていたら、初墓参りのことでした。
結果、墓地で先祖(親戚の亡くなったおじさん)に話しかけられたり、井戸から出てきた手に引きずり込まれそうになったり(住職に救われました)と、散々な目にあって、帰宅したその夜、飼っていた猫が暗闇に向かって「シャー!」と叫んだ時から、霊と私の日常は始まったのです。
それからは、家族旅行をするたびに温泉でお湯につかっている骸骨とかガラスに大写しになった霊の顔とか、嬉しくないものが付きまとってくるのが日常でした。
こんな話、誰にでもするわけじゃありません。
だって、「えっ?何この人」って引かれちゃうじゃないですか。
仕事だってやりにくくなるし。
でも、どうしても分かってしまうこともあるわけで・・・。
これもそんなうちのひとつです。
シンガポールでカミングアウト
恋するシンガポールというブログを主催しているあじゃみんさんとは、今はなき「シンガポール旅行専科」という、当時は珍しかったシンガポール専用の情報サイトの掲示板で知り合いました。
顔も見えないのに知り合ったもなにもないですが、その後あじゃみんさんがブログを始めたり、オフ会に参加したりしてお友達になったんです。
あじゃみんさんが「行ったことがない」というので、弾丸でグアム旅行にも行きました。実は、その時も例のやつら(つまり霊)は、近くに出没していましたが、その時はまだ私が見えるということは話していなかったので、怖がらせてはいけないと何もいわずにいました。でも、霊が一緒にタクシーに乗ってきた時はさすがにぞっとしたけどね。言おうかなぁ~とも思いましたけど、きっとドン引きするだろうなと思ってやめたのです。
でも、ある時にご一緒したシンガポールでは、私に我慢の限界が来てしまい、とうとうカミングアウトすることになったのです。
宿泊はサービス・アパートメント
それは、2009年10月にシンガポールのオーチャードロードから坂を上ったところにあるサマセット・コンパスというサービス・アパートメントに宿泊した時のことでした(現在は営業していません)。サービス・アパートメントとは、キッチンなどもついた長期滞在仕様のいわゆるコンドミニアムです。あじゃみんさんとメールでやり取りをしていて、行ける時期が同じ頃だったので、ホテル高騰の折り、せっかくだからルームシェアしようということで、私がグリーン・ホリデーで探したところを紹介し、快諾をいただきました。
私はJALで、あじゃみんさんはANAでの移動だったので、到着した後はチャンギ空港の第2ターミナルで待ち合わせをすることになりました。
無事に空港であじゃみんさんと合流し、タクシーでコンドへ。
チェックインはスムーズに済み、渡された鍵を持って702号室に向かいました。
エレベーターを降りると左手前に一つ、右手奥にひとつドアが見えました。
私たちの部屋は、左手前のようでした。
重たい木のドアを開けると少し段差があり、一段上って入るという作りでした。目の前はいわゆるスタディールームのような小さな部屋で、携帯の充電と物置に使ったくらいで、特に使い道はない部屋でした。
本当に人が住んでいたら何かに使うのかと思いますが、ホテル仕様なのでこうなっているのかも知れないですね。
夜、お友達が来るというあじゃみんさんは、キッチンを使いたいということで、玄関を入ってリビング奥の部屋、私は右手にある部屋になりました。
ドアを入った真正面に両開きのクローゼットがありました。奥に行くとデスクとベッドがあり、大きめの窓がありました。そして、なんだかたいそうな感じの大きな鏡もかけてありました。図だとわからないのですが、本当はもう少し家具などがあります。
廊下と部屋から入れる洗面所があり、その奥に小さな窓のついたシャワーブースがあります。シャワーブースのドアは重たいガラスのドアで、きっちりと閉まっていて、水漏れの心配はなさそうでした。
私がこの時点で気になっていたのは、この部屋のドアを入った途端、背中から何かにのしかかられるような重圧を感じたことでした。
『ヤバいところに来ちゃったのかな・・・』
何かが背中を覆い被さってきているような重さが、この後の出来事を暗示しているようでした。
あじゃみんさんは、荷物を置いてから部屋の写真を撮ると言っていたので、私もルームツアーでもするかと荷物を解きつつ、部屋を出ました。
2009年10月9日(金)あじゃみん
「えー、なんかいいじゃん、リビング広いし」
サマセットコンパスの702号室に入り、当初から決めていた私の部屋に入る時、手前にあるリビングを見て、ひとりごとを言いました。
なかなかこんな部屋を一人では借りられないし、ちょっと坂道が面倒だけど、思ったほどじゃないみたいだから、どうせ街をぶらぶらするだけだし、十分だねぇ~と荷物をほどきながらぶつぶつ言っていました。
こまりんさんがこの部屋を譲ってくれたので、夜人が来ても安心です。
荷ほどきを一気にするタイプなので、とりあえずスーツケースを開けて、持ってきたものをクローゼットにしまいました。
こまりんさんは、いつも部屋ごと持ってきているのでは?と思うくらい荷物が多いけど、私はなるべく必要最低限で、忘れたら買えばいいやというタイプなので、荷ほどきもさほど苦になりません。
あという間に整理も終わり、早速家の中の写真を撮ることにしました。
こまりんさんも一息つこうというのか、部屋を見て回っているようです。
ソファも座り心地がよく、窓も大きくて良い感じ。
でも、今はどこのホテルも液晶テレビなのに、ここにあったのは古いブラウン管テレビで、スイッチをつけても、まともに映らず、画面がオレンジ色になったりして、高いお金取っているのに、これは酷いねぇ~なんて言いながら、テレビの横を見ると、結構高そうなオーディオセットがあったので、テレビがダメなら音楽でも聴くかと置いてあったマニュアルを見て、スイッチを入れました。
すぐにラジオがついたのですが、20秒くらいするとスーッと音が小さくなってスイッチが切れてしまいました。
その切れ方も聞こえている声が回転数が落ちていって止まる・・・みたいな嫌な止まり方でした。
「なにこれ」
何度かやってみたものの、ちょっとすると同じように回転数が遅くなるようにボワンとした声が小さくなって消えてしまいます。
「高そうなのにダメじゃん」
まぁ、別にラジオ聴きに来たわけじゃないからしゃーないか。
諦めて、カメラを持って、ルームツアーをして歩きました。
その時は、こまりんさんに見える能力があるなんて全く知らなかったし、自分にはそんなもの欠片もなかったので、この時こまりんさんが変なものを見ていたなんて、まったく分からずにウキウキと歩き回っていました。
ただひとつ、そんな私でも気になっていたのは、このコンドって、やたらに鏡が多いのね・・・ということ。
別に怖かったわけでもなんでもないのですが、大きな鏡や小さな鏡がそこかしこにあって、ちょっと鏡多すぎじゃないの?って思ったのを覚えています。