あじゃみんのブログ

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ホラー映画の金字塔 エクソシストを語る その3 ~ダミアンの信仰危機~

※映画「エクソシスト(1973)」のネタバレを含みます。

※名前の表記を修正しました。

その1

その2

その2では、映画エクソシストにおける悪魔とはなんぞやというのを語ってみましたが、今回は信仰の寓話として重要なダミアン・カラス神父(ジェイソン・ミラー)に焦点を当ててみましょう。

映画の最初の方で、女優であるクリス・マクニール(エレン・バースティン)が、映画の撮影後に借りている家まで歩いて向かっていた時のこと。
教会の裏手で男性2人が何やら話をしています。

「自分が偽善者のような気がして苦しいんです」

そんな言葉に思わず足を止めて声の方に顔を向けると、後に悪魔祓いを頼むことになるダミアン・カラス神父(この時は名前もわからない1人の神父ですが)が同僚の悩みを聞いているようです。
ですが、飛行機の音にかき消されて、ダミアン・カラス神父がどう答えているかなどは聞き取れませんでした。

話が進むにつれ、少しずつカラス神父の持つ苦悩が画面に表れてきます。
ダミアンは、自分のメンターである恩師(実際のイエズス会のトム・バーミンガム師)に自分の信仰が危機に面していて、こんな状態で精神科医として他の神父たちの相談に乗る自信がないと、自分の信仰心が揺らいでいることを告白するのです。
揺らぐというより、「信仰心をなくした」と告白しました。

彼は、ハーバードで学び、ジョンズホプキンズという名門大学で学んで医師の免許も持っていますが、聖職を選んだために裕福な暮らしは望めません。

彼には苦労して自分を育ててくれた母親がいるのですが、体が悪いにも関わらず、亡くなった父と暮らした実家を離れようとしないため、たまに顔を見に行くくらいしかしてあげられることがないのです。

時間が経つにつれ、母親の容態は悪くなっていきます。
母の弟である叔父もたまに様子を見に行ってくれますが、年老いていく母を1人にしている罪悪感がダミアンの心を苛みます。

ある日、そんな母親の容態が悪くなり、病院に収容されたという連絡が入ります。
急いでその病院に行ったダミアンですが、叔父に案内されたところは、精神病院の隔離病棟でした。

精神に異常をきたした女性ばかりを収容している大きな部屋に入ると、手をベッドのヘリに縛り付けられた母親が寝ていました。
母の様子にショックを受けるダミアンに目が覚めた母親が泣きながら「どうしてこんな目にあわなきゃいけないの」と叫びます。
ここを出ようと母親に言うダミアンですが、実際にはなすすべなどなく、それが分かるからか母親には彼の心は通じないのです。
信仰の危機を抱えていたダミアンは、神と自分の絆どころか、愛する母との絆も失ってしまったのでした。

最愛の母をこんな環境に置きたくはない、でも、私立の病院に入れられるような財力はなく、叔父の「お前が神父ではなく精神科医になっていたら、もっと母親を楽させてあげられたのに」という言葉に胸をえぐられます。

そして、その母は亡くなってしまうのです。

ダミアンの心は深く深く沈み、夢で母親が自分のところから去っていき、まるで地獄に落ちるように階段を下りて行ってしまいました。
ダミアンは大声で叫びますが、その声は母親にはまったく届かないのでした。

神と悪魔が近づくとき

その頃、クリスの娘であるリーガン(リンダ・ブレア)は、悪魔に憑依され、状況は悪化の一途をたどっていました。
クリスはあらゆる手を使って娘を救おうとしますが、大勢の医者もそのほか誰もリーガンを治すことはできませんでした。
クリスは信仰を持っていませんでしたが、医師たちから「こうなったら悪魔祓いをするしかないのではないか」と言われます。
医師もそれを信じているというよりは、そうやって悪魔はいなくなったと暗示にかけるのが効果的なのではという思いからの助言でした。

万策尽き果てたクリスは、以前から評判を聞いていたダミアン・カラス神父と約束をし、リーガンのことを相談することにしました。

ここで、これまで距離のあった神と悪魔がぐっと近づいていきます。

リーガンの救済を懇願するクリス

【画像出展】

Titles: The Exorcist
Ellen Burstyn, Jason Miller
Image courtesy gettyimages.com