あじゃみんのブログ

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ホラー映画の金字塔 エクソシストを語る その2 ~悪魔とは~

※映画「エクソシスト(1973)」のネタバレを含みます。

その1

 

エクソシストを観た人のコメントで、ここが分からないというので多かったのが、なぜ少女リーガンに悪魔が憑りついたのかの説明が何もないというもの。
これについては、「リーガン」という存在が最終的に悪魔パズズの敵であるメリンへと繋がっていくからです。

堕天使

そもそもこの悪魔ってなんでしょうか?

映画ではメリン神父が「デーモン」と呼びますが、日本語でいうところの悪魔って、不浄なものとか悪の象徴とか、特定の「これ」というのではなく、宗教的に「悪いもの(信仰を邪魔する存在)」というような意味があるようです。

サタンやデーモンについては、キリスト教(この映画ではカトリックを指します)ではサタンがその役割で、デーモンというのは「悪霊」的な意味合いのようですが、サタンも含めた存在として総称のような形で使われているようです。

キリスト教でいうところの悪魔である「サタン」は、もともとは神に仕えていたルシファーという美しい大天使でしたが、美しき者の常として、「わたしがナンバー1♪」と傲慢にも「神よりわたしのが偉いの~♪」などとのたまい、神の逆鱗に触れて地獄に落とされ、地獄の長となった者をいうようです。

映画内の悪魔は、大人の事情で変わっているらしい

キリスト教の伝統によると サタンは、元々「ルシファー」という名の、神に仕える御使いであった。彼は多くの天使を率いる十二枚の翼を持った美しい大天使長であったともいわれる。 しかしある時神に敵意を示し、自分に賛同する天使達を集めて、大天使ミカエルの率いる神の軍団との戦いを開始する。戦いは長く続くが最終的に敗北し、ルシファーと天使の三分の一は天から投げ落とされてしまう。(Wikiより)

こんな感じでもともとは天使だったのに、まぁ、勘違いしたのかなんなのか、神様に敵意を示してしまうんでしすね。全知全能ですべてが愛というわりには、こういう時の神様って気が短いというか、激怒して地獄に落とすとか、そういうところが私には理解できないところなんですけど、信教の自由は尊重していますので、矛盾は矛盾で置いておきます。キリスト教における七つの大罪(傲慢(Pride)、強欲(Greed)、嫉妬(Envy)、憤怒(Wrath)、色欲(Lust)、暴食(gluttony)、怠惰(sloth))において、それらを象徴する悪魔が割り当てられています。傲慢はサタン(ルシファー)、強欲はマモン、嫉妬はレヴィアタン、憤怒はサタン(あれ?)、色欲はアスモデウス、暴食はベルゼブブ、怠惰はベルフェゴールとなっています。

ルシファーとサタンて同じやないんかい!と突っ込みを入れた方!

確かにそうです。どうやら、神より己が偉いと傲慢になったルシファーと地獄に落とされて怒り狂ったサタンとで、大罪に分類する時は分けられているようです。

パズズってカトリックじゃないよね?

こんな風に悪魔となったルシファーですが、同じく地獄へやられてしまった堕天使たちの中には、エクソシストで「悪魔」として描かれたパズズは入っていないんですよね。なんか、こういうところはちょっとわかりにくいのですが、パズズはもともとメソポタミア神話の中でアッカド人が広めたと言われるアッカド神話に出てくる「熱と熱風の悪霊」なんですよ。それがなぜカトリックが軸に描かれているエクソシストで用いられたのかよくわかりませんが、調べてみると原作ではパズズじゃなくて堕天使の代表格である悪魔「ベルゼブブ」が出てくるんだそうです。なぜそれが関係ないパズズになったのかは監督のコメンタリーにも出てこないのですが、イラクでの撮影時にパズズの像とメリン神父が対峙する場面があり、絶対的「悪」と絶対的「善」の対決を予想させる場面として描かれていました。

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悪vs善

きっと、パズズの方が映画的に”映える”からだったんですかね。

撮影は実際の発掘現場で行われていたそうですが、この像が本物かどうかはわかりません(使わせてくれるとも思いませんしね)が、ベルゼブブよりもインパクトがあると思ったのかもしれないですね。

悪魔は弱い者に憑りつく

さて、最初に出てきた疑問「なぜパズズはリーガンに憑りついたのか」について考えてみましょう。この映画の後半近くで、リーガンの症状が一向に改善されず、藁をもすがる思いでエクソシズム(悪魔祓い)を依頼したダミアン・カラス神父が上層部に儀式の許可を求めるました。カラス神父では若く経験もないのでエクソシズムの儀式を行わせることはできないとして、イラクから戻ってきているメリン神父なら、対処できるだろうと話す場面があります。そう、このランカスター・メリン神父はエクソシスト、つまり悪魔祓い師だったのです。彼は、ずっと以前にもパズズと戦ったことがあり、今回もパズズの宿敵として、冒頭の像との対峙シーンで暗示的に描かれていました。以前、パズズと対決したメリン神父は、その戦いを勝利で終わらせているのです。これは「悪魔に負けなかった」ことを意味します。悪魔は元天使で、地獄に落とされたことで神に対抗する絶対悪という存在になったのですから、人に憑りついて地獄に引き込むことで、人々が神のもとへ向かうことを妨害しているのです。

悪魔に「死」はありません。

神に「死」がないように、悪魔も追い払うことはできても、消えてなくすことはできないため、次に人に憑りつく機会をいつも待っているのです。そんなパズズにとっては、自分を打ち負かして人を地獄に落とす邪魔をしたメリン神父の動向は、常に監視対象です。

誰に憑りついたとしても、メリン神父との闘いの機会をうかがっているのです。そして、それに一番近い存在として、リーガンに目をつけました。もちろん、当初はリーガンがメリン神父と繋がっていたわけではないのですが、信仰の危機に瀕しているダラス神父を巧みに引き込むことで、メリンへの道筋を作っていったのです。

悪魔は、無垢な弱い者に憑りつきます。

健康で活発な明るい女の子であるリーガンですが、愛する父親と母親が離れてしまったこと、母親が時折り使う汚い言葉や母との関係を疑っている映画監督の存在など、段々と心に「闇」が広がっていました。そこに悪魔は付け入っていったのです。

地下室でリーガンが見つけたウィジャボードを通してリーガンに近づき、親切なキャプテンハウディとしてリーガンと対話するのです。

そして、リーガンは少しずつ、悪魔に心を蝕まれていきます。

リーガンが作った奇妙なオレンジの像も、鳥のように見えますが、パズズの像を連想させる形です。こんなところで、リーガンが悪魔につけられてしまったことが暗示されているのです。

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この顔怖すぎ

【画像出展】
Titles: The Exorcist
People: Eileen Dietz
Image courtesy gettyimages.com