中島監督作品の印象
この映画の監督である中島哲也氏の映画は、「告白」とか「パコと魔法の絵本」くらいしか観たことはありませんが、CMディレクター出身とあってか、画面の造りが独特なのと場面の転換が面白いなという印象です。
あと、映画に関しては、いわゆるThat's Entertainmentという感じで、重い内容であったとしても、魅せるエンタメ作品として仕上がってるという印象もあります。
宝塚っぽいっていうのかな。
何が来る?
タイトルの「来る」ですが、本当に何かがやって来る、でもなんだかよくわからないというのが観た感想です。
「きますよ」「来る!」「呼ばれたら逃げられない」となんだか恐ろしいものがやってくるとわかるのですが、最後まで何が来るのか、いや来たのかは謎でした。
いや、来るんですよ、本当に「アレ」が。
でも、その「アレ」がなんだかが今ひとつ分からないんです。とはいえ、その「アレ」に次々殺されていく人を見ていると、「来る」ものが何かというよりは、出ている人間たちが「アレ」より恐ろしいというか、本当に人間て嫌らしい汚い生き物なのねというのが際立っているので、そちらの方が「怖い」のだというのがわかります。
この映画には原作があって、そのタイトルは「ぼぎわんが、来る」だそうです。
このぼきわんというのがこの映画の「アレ」にあたるバケ物なんですが、作者の創造したものだそうですよ。
松たか子サイコー
出番は終盤ちょっとだけなんですけど、この映画で「アレ」を退治できるのはこの人しかいないということで、松たか子扮する沖縄のユタの血を引くと言われる最強の霊媒師・比嘉琴子の登場場面はなかなか面白いです。
今まで何人もの人が死んでいるのにそんなものは当然とばかりにたばこをふかしてポーカーフェイス。
なにやら政府の高官ともつながりがあるようで、「アレ」を退治するために協力を要請し、「アレ」を犠牲者の部屋に呼び込むために一帯を「ガス漏れ」として住民を避難させてしまうほどの力の持ち主。
まったく笑わず、アレの説明をしながら「怖いでしょ?」という表情が、あんたの方が怖いわって感じ(笑)この役は、松さんしかできなかったかもと思うほどにハマってましたね。告白の演技も良かったですが、輪をかけてなんか怖~い人でした。
いうなれば、エンタメホラー
いわゆる、Jホラーの中でも、正統派とは程遠い、エンタメホラー。
ぞっとさせながらも、大掛かりな演出ときりっとした場面転換で惹きつけられました。
ただ、中島監督の映画を観て毎回思うのは、「これっていらなくない?」っていう場面が必ずあること。
最後の子供の夢のシーンは、まったくいらないなと思いました。
映画がだれるだけのような気がします。
全編を通して、一見悪いところがなさそうな人間の、嫌~な面をこれでもかと見せてくれたのは、それが本当におばけより怖い映画という印象でした。
来る(2018)
監督・脚本:中島哲也
出演:
妻夫木聡(自称イクメンパパ・田原秀樹)
黒木華(田原の妻・香奈)
志田愛珠(田原の娘:知紗)
岡田准一(何でも屋ライター・野崎)
小松菜奈(キャバ嬢にして霊能力者・比嘉真琴)
松たか子(最強の霊媒師・比嘉琴子)ほか