あじゃみんのブログ

美味しいものや、経営する雑貨店のこと、女性の心身の健康について、その他時事ネタなど好き勝手に書いているブログです。

歩いても歩いても

邦画といっても、時代劇を始めサスペンスやアクション、はたまたSFなど、さまざまな種類がありますが、私が邦画でいいなと思うのは、なにか心にじんわ~りと染み入ってくるような、そんな印象を受ける映画です。

是枝裕和監督の「歩いても歩いても(2007)」も、そんな映画のひとつだと思います。

 

【あらすじ】
ある夏の日。
横山良多(阿部寛)は妻のゆかり(夏川結衣)と息子のあつし(田中祥平)とともに海の近くにある実家に帰省します。息子といっても、妻の死別した前の夫の子供なので良多と血はつながっておらず、あつしは良多になついてはいますが、まだ「良ちゃん」としか呼んでいません。

また、失業中の良多は、そのことを言えずにいたため、両親(原田芳雄樹木希林)との再会は苦痛でしかありませんでした。

 

【感想など】
良多が、先に実家に来ていた姉(YOU)の家族と合流し、横山家の「その日」は始まります。
子供たちのにぎやかな笑い声の裏で段々と「なぜ今この家族がここに集まっているのか」というのが分かってくるのですが、少しずつ少しずつ母の口から語られる事柄から、家族の背景が垣間見えてきます。

この映画の特筆すべきところは、やっぱり両親役のおふたりの演技のうまさ。
町医者を引退してからも、コンビニの袋など格好悪くて下げられないという見栄っ張りで頑固な父親と専業主婦で子育てと夫の世話でずっと暮らしてきた母親。
このふたりの価値観と現代に生きる娘と息子のずれが面白い。
口では優しそうなことを言うけれど、笑いながら「あなたの子供は本当の孫じゃない」って遠回しに差別する姑の怖さ。

また、ある場面で、唐突に家族とは関係ない人が登場するのですが、その場面からその人が帰る時の背筋がぞっとするほどの恐ろしさ。

人の「死」が周囲の人たちにとってはどういうものなのか、親と子、妻と夫、自分のことに絡めて考えたくなりました。

ゆかりとあつしがふたりだけで、ゆかりの亡くなった夫について話す場面があります。
あつしの本当の父親は死んでしまったわけですが、ゆかりの「死んじゃってもね、いなくなっちゃうわけじゃないのよ」というセリフは胸に響きました。

他のサイトでは、もう少し詳しいあらすじが書いてありますが、あえて読まずに見て欲しいので書きませんでした。
先入観なく見た方が、この映画の良さを実感できると思います。

ある程度の年齢であれば、自分にも当てはまるという部分が少なからずあるはず。

樹木希林さんと原田芳雄さんの演技が本当に素晴らしくて、原田さんが亡くなられたのが心底悔やまれます。
まだまだ活躍して欲しかった俳優さんでしたね。

そういう意味でも、観ていて涙が止まりませんでした。

この題名も老夫婦の思い出の曲に掛けてあって、なるほど・・・という感じです。
ぜひ、ご覧ください。

歩いても歩いても(2007)

原題: STILL WALKING
原作・脚本・監督:是枝裕和
出演:
阿部寛(横山良多)
夏川結衣(良多の妻、ゆかり)
YOU(良多の姉、ちなみ)
高橋和也(ちなみの夫、信夫)
樹木希林(横山とし子)
原田芳雄(横山恭平)ほか