松本清張生誕100周年の記念作品「ゼロの焦点」が2009年11月14日から公開されます。
3人の女性が鍵となる映画ですが、1961年製作の野村芳太郎監督作品では、その3人の女性を久我美子・有馬稲子・高千穂 ひづるという当時の人気女優が演じて話題になった映画です。
さすがに生まれていないので見たのはDVDですが、こういう昔の作品を見ると「日本語というのは本来綺麗な言語だなぁ」とつくづく感じますし、昔の俳優さんて、やっぱり今と違うなと感じます。
また、脚本が橋本忍・山田洋次という日本を代表する脚本家というのも、軽さを感じさせません。
この時代の映画は、今見ると確かに古臭いし、何もない時代でちょっと地方に行くにも夜行列車に乗らないといけなかったり、電話は近所の人に借りに行ったりと、今なら考えられない不便さを感じますし、展開が遅くなるというデメリットもあります。
でも、それだからそこの情緒もあって、今の作品との違いは、薄っぺらさがないというか、作品に厚みを感じられるような気がします。
今年リメイクされるというので「おっ!」となりましたが、禎子役(主人公)が広末涼子と聞いて、まったく観に行く気がなくなりました。
別に広末涼子が悪いというわけではないですが、この作品のこの役にどうして配役されたのか不思議でしょうがないんです。
おくりびとの時もそうでしたけど、よほど事務所の力が強いのでしょうか。
最近は、その役にあった配役よりも、そのスター目当てにお客が入ればいいという配役が多すぎる気がします。
というより、そこまで俳優の層が薄くなったのかも知れませんけど。
(広末がそんなにまで人気があるとも思えないし)。
誤解されると困るのですが、広末涼子が嫌いとかそういうこともないんですよ。
これはいいと思える役だってちゃんとあります。
俳優だけじゃなくて、最近はテレビドラマもひどいもんだし、最初は自分が歳をとって今の若い俳優に着いていかれないからだと思っていたのですが、こういう比較対象があるとやっぱりそうではない気がしてきました。
どんな重たい役をやっても、俳優本人が薄っぺらくて軽いので、どうしてもその役にはまっていかない人が多いんです。
なので、見るのが嫌になる。
それに漫画や小説の映画化ばかりで、あまり良いオリジナル作品がなくなってしまい、その「みんなが知ってる役」を演じてばかりのドラマが多いせいかもしれません。
それが悪いわけじゃないけど、たとえ原作があろうとも、もっと「見てよかった」と思えるような作品が世に出て欲しいものです。
まぁ、そうはいっても、何もすべて昔が良かったなんて思ってもいません。
今は今でいいところがあるし、昔に戻りたいなんてこれっぽっちも思っていないのですが、こと映画となるとどうにもやるせないというか、こういう文芸作品を「この人なら」と思える俳優で見たいだけなんですけどねぇ・・・。
そもそも、いるのか?っていうのもありますが・・・。
<ストーリー>
26歳の板根禎子は、広告代理店に勤める鵜原憲一と親の進めるまま見合いをし、結婚した。新婚旅行を終えた10日後、憲一は、仕事の引継ぎをしてくると言って金沢へ旅立つ。しかし、予定を過ぎても帰京しない憲一。そこへ勤務先から憲一が北陸で行方不明になったという知らせを受ける。急遽金沢へ向かう禎子。憲一の後任である本多の協力を得ながら憲一の行方を追うが、その過程で彼女は、夫の隠された生活を知り驚愕の真相に迫っていく。
ゼロの焦点(1961年松竹)
監督:野村芳太郎
脚本:橋本忍 山田洋次
【出演】
鵜原禎子:久我美子
室田佐知子:高千穂ひづる
田沼久子:有馬稲子
鵜原憲一:南原宏治
鵜原宗太郎:西村晃
室田儀作:加藤嘉
宗太郎の妻:沢村貞子