いやぁ~、今回は怖いですよー。
リライト作業していても、突然グワン!とか変な音がしたりして、恐怖MAXです。
かなりな長編なのと、途中まででギブアップしたので、なんとかリライトできた部分を載せることにします。
あー、おっかない。
もう、続きをリライトするの嫌だなぁ~。
では、皆さん、お楽しみください。
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先月の終わり頃から、ずっと同じ夢を見ていました。
薄暗く長い廊下をずっと歩いて行くと、行き止まりには大きな鉄の扉があるのです。
重い扉を思い切って開けるのですが、中には大量の首のないマネキンがいて、扉の前に立っている私めがけて一斉に走り出し、驚いて逃げる私をずっと追いかける足音が聞こえます。
気づくとそのマネキンたちは、私の真横まで追いついてきて、私の背中や腕にその不自然に白い腕をからめてきます。
そのマネキンの手を振りほどきながら必死で逃げていると、今度は何かに躓いて思い切り転んでしまう。
いったい何に躓いたのかと見てみると、足下にはたくさんのマネキンの頭が転がっているのです。
そして、すべてのマネキンの目は、私の顔をじっと睨みつけていました。
あまりの恐怖に絶叫し、毎回ここで目が覚めました。
「はぁ~、夢・・・・」
自分としては、珍しく過激な夢・・・いやこうなるともうホラーって感じですが、いったいなぜこんな夢を見るのか不思議に思っていたのです。
つい先日、耐震診断のお仕事をいただき、東京近郊の大きな倉庫群のあるエリアに行くことになりました。
以前は、アパレルメーカーの物流倉庫として使われていたそうですが、機械化が進んだ昨今では、人の手での仕分けもほとんど行われないため、倉庫としての利用頻度が下がり、その場所での在庫管理等も難しくなっていき、10年前にとうとう倉庫としての用をなさなくなり、そのまま放置され続けているそうです。
今年に入り、この倉庫を借りたいと希望する業者が出てきたため、耐震状況その他を診断し、安全にその業者に貸し出せる状態かどうかを報告書にまとめて本社に提出するというのが今回いただいたお仕事でした。
事務所の男性2人と車で移動し、ナビに入力した住所に到着した時には、目の前に建つ、まるで廃屋のような外観になぜか背中がぞっとしました。
建物は5階建てで、1階はトラックがそのまま入れる高さがあり、その横には管理人室がありました。
管理人さんは週3日しか出勤されていないと聞いていましたが、その日は出勤日だったことで、本社の○○氏から依頼を受けてうかがったことを伝えると、「へぇ」と言った後で「俺は、この辺りしかうろつかないから、上の階とかは知らないよ。図面出しておくから勝手に見て。カギも一式置いておくから勝手に使ってよ。悪いことは言わないからさ~、あんた達、さっさと帰った方がいいよ」と言ったのです。
確かにこの外観を見れば、昼間の日が当たった状態でも気持悪いのは否めませんでしたが、帰った方がいいと言われても、仕事が終わらない限り帰るわけにもいきません。
とはいえ、管理人さんに言われなくても、すでに嫌な気配を感じとっていました。
「さっさと終わらせて帰りますよー」などと適当に返事をして鍵を受け取ると、図面を出してくれるのを待って構造を確認し、まずは最上階から順番に下りてくることにしました。
奥にあるエレベーターに乗ったのですが、中はなんだか薄暗いため、懐中電灯を取り出して準備しました。
エレベーターも久しぶりに動いたのか、なんだか変な音がして、それも一層私を嫌な気分にさせました。
グワン・・・と音がしてエレベーターが止まると、ゆっくりとドアが開きました。
外に出ると何も置いていないがらんとしたひたすら広い空間に柱が無数に立っているだけの部屋でした。
締め切ってあるからか、じめっとした空気が漂っています。
加えてその日は曇りのち雨の予報だったからか、余計湿度が作業の邪魔になりました。
「暑いっすねー」
一緒に来たスタッフのうちの1人がうんざりした顔でそう言いました。
とにかく広い部屋で、普通これだけ大きな空間だと、階段が2か所はあるはずです。
まずはその階段の状況を調べようと、階段室の位置を図面から探しました。
ひとつは、今乗ってきたエレベーターの横、もうひとつはそこから対面のずっと奥にある扉の向こうのようです。
肉眼で見ても、広すぎて視力の良い私にも扉が小さく見えるのが分かる程度でした。
ゾク・・・背中に悪寒が走りました。
風邪でも引いたのかも・・・と無理やり言い聞かせて、調査を開始しました。
エレベーターの横にある階段室の扉を開け、中を調査しながら、ゆっくりと1階まで下りて行きました。
一か所の階段の調査はなんとか終わり、次はもうひとつの階段室だと、管理人の男性に図面を指して「すみません、奥にあるこの階段室って使ったことはありますか?」と聞いてみました。
すると、管理人さんは「あんた!そんなところ行くもんじゃないよ。何言ってんだ!あそこは鍵をかけてドアノブは鎖を巻きつけてあるんだ。私の前の管理人にも絶対に開けるなって言われてるんだぞ!」とすごい剣幕で怒鳴ったのです。
そう言われても、管理人に言われたから調査しませんでしたなんて報告書を書けるわけがありません。
「それは分かってます。鎖が巻いてあるのは遠くからでも見えましたから。それでも仕事ですから、調査しないわけにいかないんです」
私がきっぱりいうと、管理人はむっとした顔をしながら、「あんた、なんとかっていう霊能者か?・・・・やめとけ。あいつらに勝てる霊能者なんていやしない」と言ったのです。
「・・・霊能者でも勝てなかったんですか?」
この人は分かっている・・・そう思った私は単刀直入に聞きました。
「前の管理人が言ってたんだ。祓って帰ったと思ったら帰りの高速で事故を起こして、黒焦げ死体が黒いマネキンみたいになってたって」
それを聞いたスタッフ2人が、「マジ?!」と顔面蒼白になっていました。
『私、帰るわ~!さよなら~!』
心の中で叫びました。
とはいえ、本当に帰るわけにはいかないので、午前中で帰るという管理人を見送ると、彼の残した言葉を胸に調査を再開しました。
ずっと使っていない倉庫ですから、特に大きな障害になる物はなく、各フロアの調査は、曇り空でもわりと明るかった午前中に済ませることができました。
そうはいっても、あじゃみんさんもシンガで遭遇した、「高速で動き回る黒い影」は常に私たち3人の周りをグルグルと回っていましたけど・・・。
報告書に添付するため、現場写真を撮るのですが、シャッターも下りない状態になっていました。
写真担当のスタッフAが「こまりんさん、さっきよりも悪いですね。ここ写真全然撮れないっすよ」と困った顔で言います。
「頑張ってよ。念じれば絶対撮れる!」
そう発破をかけると、Aは「念じる??・・・なるほど、写真を撮る!」
パシャッ!!
「撮れた!!・・・・うわっ!!」
「なに?」
カメラを持ったAは、じっと自分の持っているカメラを見つめているので覗いてみると、裏の画面には灰色の空のような一面の写真に赤い点が写っていました。
赤い点は、攻撃するぞという威嚇のサインです。
そろそろ限界かも・・・そう思いました。
しかし、まだ例の階段室が残っています。
こんなことがあったからといって、何もせずに帰るわけにはいきません。
「とにかく、あとは階段室だけだから、さっさと済ませて帰ろう」
ふたりの男性スタッフに言うと、もう一度5階に上がって、エレベーターから遠い方の階段室扉の前まで歩いて行きました。
管理人から借りた鍵を使って開錠し、グルグル巻きにされた鎖を3人でほどきました。
扉に手を掛けた時、なんとも嫌な気持ちになった私は、ふたりに声を掛けて3人で扉を開けることにしました。
「せーの!」
・・・・ガチャ。
ガラガラガラガラガラガラ!!
「きゃーーー!!!」
一瞬、何が起きたのか分からなかったのですが、その扉の裏側に立てかけられた何かがすごい音を立てて私たちの上に崩れ落ちてきました。
びっくりはしたものの、たいして重たいものではなかったので、すぐに立ち上がることができました。
「・・・・・なにこれ?」
目の前には、大量の頭のないマネキン人形が転がっていたのです。
階段、階段の踊り場・・・・誰も通れないほど、びっしりとマネキンで埋め尽くされていました。
「うっ・・・うわぁ~!!」
まだ倒れたままの男性スタッフAがいきなり叫びました。
見ると、彼の上に倒れてきていたマネキンの手がグーになっていて、彼のシャツを掴んだまま放さないのです。
「放せ!放せよ!!」
彼が大声でシャツを引っ張っても、大声で叫んでも、マネキンはそのままの状態で離れようとしません。
私はとっさにペットボトルの水をマネキンに掛けました。
すると、グーになっていたマネキンの手が開き、彼のシャツを放したので、急いで立ち上がりました。
「逃げて!」
Aは、なんとか立ち上がってマネキンから離れました。
もう一人のスタッフBを見ると、彼は脱げた靴をマネキンに握られていて、必死になってそれを取り返そうとしていきました。
「くそー!返せ!」
叫びながら靴を引っ張っている彼に近づいて、今度は靴を持ったマネキンの手に水を掛けました。
「?!取れた!」
Bも、取り返した靴を持って急いで立ち上がり、その場を離れました。
「エレベーターまで振り返らないで走るわよ!」
私はふたりに声を掛けて、後ろを振り返らずに走り出しました。
やっとエレベーターにたどり着き、ボタンを押してエレベーターを待ちました。
数値を見ると、エレベーターは1階にあったようで、5階までは1つ1つライトを点けながら上ってきます。
「早く!」
震えながらエレベーターを待っていたのですが、頭の後ろでズル・・・ズル・・・・と、まるでゴムを引きづっているような音がしていました。
もう、部屋の真ん中あたりまで迫ってきています。
「早くしてよー!」
ズル・・・ズル・・・・近づいてくる音についてはもう考えない!!と無理に思うことにして、エレベーターの到着を待ちました。
チン!・・・と古いベルの音がして、エレベーターが止まりました。
「早く乗って!」
ふたりに声を掛けてエレベーターに乗り込むと、すぐに1階のボタンを押しました。
「はぁ~、怖かったぁ~。さすがにもう無理」
エレベーターに乗り込んだ安堵感から、ちょっと大げさと思うくらいの声を上げてしまいました。
「せっ、先輩!」
スタッフAがいきなり叫んだので、びっくりして彼を見ると、何故かエレベーターが4階で停まりました。
スタッフAは、階数のボタンを見ていたのです。
「・・・・なんで?!」
ゆっくりと開きかけた扉をなんとか開かせないように、何度も何度も「閉」ボタンを押しました。
なんとか、扉は大きく開くこともなく、再び閉まりました。
エレベーターは何事もなかったように再度降下を始めました。
顔を見合わせると、3人とも顔に嫌な汗をかいていました。
そして、3人ともまるで全力疾走した後のようにゼーゼーと息切れをさせて、体も震えているのがわかりました。
それからは一気に1階に下りたので、扉が開いたと同時に外に飛び出しました。
外は、雨が降り始めていました。
3人とも、しばらくは口もきけず、呼吸を整えていました。
「先輩ぃ。さっきの階段室・・・1階はどうなっているんですかね~」
スタッフAがボソッとそんなことを言いだしたので、私は持っていた残りの水を彼に掛けました。
「なに誘導されてるのよ!私はごまかせないわよ!」
「冷たっ!・・・・えっ?今、なんか言ったっすか自分?」
いつもの彼の口調に戻っていたので安心し、「憑かれてたよー」と笑うと、「やめてくださいよー」とAはなんとも言えない顔をしました。
「さて、どうしたものか・・・」
結局、階段室の調査は終わっていないので、このままにしていいのか、仕事を請け負った手前、躊躇する気持ちもあったのです。
するとAが、
「今日はもう帰りましょう。十分じゃないっすか~!うちらは十分に調査した!」とまるでなんとか宣言のように手を挙げたので、「それもそうね」と頷きました。
「それに、続行は限りなく不可能っす!」
Aはそういうと、ニヤッと笑いました。
3人とも帰る気満々になって、荷物を片付けようとしていたところ、そこへ、トラックの音が近づいてきました。