あじゃみんのブログ

美味しいものや、経営する雑貨店のこと、女性の心身の健康について、その他時事ネタなど好き勝手に書いているブログです。

切ないOLに捧ぐ

若い人は知らないかも知れませんが、私の若い頃は内館牧子(うちだてまきこ)さんが書いた脚本のドラマがヒットして、脚本家としては結構有名な方でした。

御年72歳の今日では、小説の執筆やコラムの執筆、そして雑誌のインタビューに登場する程度ですが、80年代後半から90年代は、内館さん脚本のドラマをよく見ていました。

今井美樹さん主演のドラマで「思い出にかわるまで」や「あしたがあるから」など、毎週楽しみでしたし、クリスマス・イブというドラマも若者の一大イベントであるクリスマスをどう過ごすかみたいな誰もが浮かれていたバブリーな日々を面白く見ていたものです。

そんなヒットドラマを書いていた内館さんは、なぜ脚本家になったのか。三菱重工という日本のトップ企業のOLを経て、まったく違った世界に飛び込んだわけは?という疑問に答えてくれる本が、「切ないOLに捧ぐ」です。

72歳の内館さんが大学を卒業して就職した時から脚本家になって活躍するまでの話なので、結構古い時代の話ではあるのですが、今読んでも「悩みっていつの時代もそう変わらない」というのが非常によくわかります。

当時、大企業の女子社員は、ほとんどがコネ入社でした。

私が転職した2000年頃は、その残像のようなOLがいた程度ですが、昔の大企業のOLは単なる社員のお嫁さん候補だったので、良家の子女を雇うのは当たり前って感じだったのでしょう。

さすがに外資だと「お嫁さん候補」という感じではなかったのですが、アシスタントの女性はコネじゃないと入社できなかったと生え抜きの人に聞いたことがありました。

入社2年目あたりまでは、本当に会社とは楽しいところである。

(略)

会社は結婚までの腰掛けと思っていたので、早い話が仕事の質も量もどうでも良かった。(同書、23歳の極楽より)

多かれ少なかれ、昔の一般職OLの意識なんてこんなものだったと思います。今はさすがにないと思いますけど、結婚が人生の目的である20代前半にブランド企業に勤める一般職のOLに仕事に対しての高い意識などなかったでしょう。

結婚までの腰掛けなら、ブランドOLほど楽なものはない。世界に名の通ったブランド企業に勤め、福利厚生はしっかりと利用し、ほとんど頭を使わない仕事を与えられ、責任はなく期待もされず、選りすぐられた紳士的な男子社員が「お嬢さん」と呼んで大切にしてくれる。

(略)

こういう私のような能天気なOLが「女に仕事は任せられない」という地盤をつくってしまったのだと思う。だが、私はもとより周囲のごく普通のOLたちの多くは、それほど高い意識なんて持ってはいなかったと思う。高い意識を持っている女たちは、初めから普通のOLなんてやりはしない。(同上)

今の時代、女子社員に対して「お嬢さん」なんて呼びかけたら、セクハラだなんだと大変なことになりそうですが、その時代の腰掛OLからしたら、「お嬢さん」と呼ばれることは普通のことだったと思います。

内館さんも入社2年目までは、そんな極楽OL生活を満喫していましたが、「若いからこそ」そうだという目の前の現実に直面することになります。

当時、27・8歳の先輩OLが海外赴任から戻った男性社員にお茶を淹れて持ってきた時、「あれ?XXXちゃん、まだいたの?」と大声で言われます。そして、周囲の若い後輩女子たちが「やだ、悪~い!」と大笑いしたのです。先輩は顔色ひとつ変えず「まだいたんですよ。もらってくれる人がいないもので」と言って給湯室に戻っていったが、全然戻ってこないので、内館さんが様子を見に行くと、湯飲みを洗いながらしゃくりあげている先輩がいました。自分もあと2年か3年したらああいう風になるのかと現実を突き付けられたわけです。

こんな状況でありながらも、結局13年半もOLを続け、その後退職するのですが、そこまでの紆余曲折を1年ごとに区切って赤裸々につづられているので、時代が変わったといっても、女性の心理とか恋人への思いとか、なかなかどうして読めるなぁ~と思います。

そんな経験を自身の脚本にどう活かしたかとか、その反響はどうだったのかなども書いてあって、面白くて一気に読んだのを覚えています。

時代は変わっても、人はそう変わらない。

内館さんのようにはなれない私ですが、エッセンスはいただいて人生を楽しもうと思っています。

 以下はKindleですが、文庫は中古しかないので安く買えますよ。

切ないOLに捧ぐ (講談社文庫)

切ないOLに捧ぐ (講談社文庫)

  • 作者:内館牧子
  • 発売日: 2019/06/28
  • メディア: Kindle版
 

これから本の紹介にも力を入れていこうと思います。

まだほとんどないですが。

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