「あの・・・なるべく気を引き締めて行った方がいいかも知れないですよ」
ちょっと暗いトーンだったからか、班の人は笑って
「あら、こまりんさん、怖くなった?」
と聞いてきました。
私は真面目な顔をして、
「うん。さっきみんなが言っていた大勢の人たちって、どこから入ったの?」
と答えました。
「えっ?」
「駐車場に車もなかったし、バイクとかも置いてなかったよね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「もし怖いなら、キャーとか叫ぶなら分かるけど、死ぬ!とか殺してやるとか叫ぶ?肝試しで」
「そう言われてみれば・・・」
班のみんなの顔から、笑顔が消えました。
「たぶん、本物だよ」
「えっ?」
思わず立ち止まります。
「私たち5人以外は、全部本物だと思った方がいい」
「そっ、そうなんだ・・・」
「気をつけなくちゃ」
なんだか、楽しい雰囲気に水を差してしまったかなと思いましたが、本当に出るのであれば、しっかりと気を引き締めないと恐ろしいことが起こるかも知れません。
口数も少なく歩いていると、しばらくして廃墟に到着しました。
ボロボロの入口に着いて中を覗いてみると、聞いていたのとは違って、シン・・・と静まり返っていました。
叫んでいる声など、何も聞こえません。
「なんか色々落ちてるから、足下にも気を付けて入りましょう」
そう注意して、みんなで固まって中に入りました。