あじゃみんのブログ

美味しいものや、経営する雑貨店のこと、女性の心身の健康について、その他時事ネタなど好き勝手に書いているブログです。

審判 深谷忠記著

加害者と被害者。

犯罪の当事者になってしまった人々って、結局「裁判が結審した」としても、それで「ハイ、終わりです」とはならないですよね。

こと「人の命を奪った」殺人という重い罪については、たとえ犯人が死刑になったとしても、亡くなった被害者が戻ることはありません。

当事者が納得するしないに関わらず、法的に決着したというだけで、起きてしまったことがなかったことにはなりません。

この「審判」は、犯罪に対しての真の審判とは何かという問いかけがなされた作品でした。

 

ある県の歴史的な遺跡のある公園で、古畑麗(8歳)の全裸死体が発見された。
出てきた証拠から、犯人は柏木喬(24歳)と断定され、裁判の結果、懲役15年の判決が下る。

 

柏木自身は「自白」はしたものの、裁判中は終始一貫して「無罪」を主張し、自白は強要されたものであり、冤罪だと言い続ける。

しかし、車のトランクから出てきた少女の毛髪などが動かしがたい証拠とされ、柏木の主張が認められることはなかった。

 

刑期を満了し、出所した柏木は「自分は無実だ」と、ウェブサイトを開設し真犯人は時効のため罪にはならない(小説は法改正以前の物)から名乗り出て欲しいといい、自らも当時の取り調べを担当した刑事の前に現れたり、執念の行動を見せる。

果たして、柏木は無実なのか、だとしたら、いったい犯人は誰だったのか。

 

登場する人々が丁寧に描かれることから、ちょっと説明が長いなと感じる部分もありますが、ストーリー自体は意外な展開に一気に読めました。

 

読者には、犯人を取り調べた元刑事(村上)が当時どのような取り調べをしたかなどの情報が開示されるので、犯人として服役した柏木がどんなに「証拠をねつ造して自白を強要した」と言っても、村上がそんなことをしていないのはわかるのですが、人間本当に犯罪を犯したとしたら、ここまでやれるものか?という疑問もわいてくるので、じゃあ、誰が少女を殺したのか・・・という興味はわいてきます。

 

そこで、登場人物ひとりひとりが当時どうだったのか、殺された少女の同級生が目撃したある人物の話など、徐々に真相に近づいていきます。

 

「もしかして、この人が?」

 

というのが「当たった」と思うと次には「あれ?」と違う方向に進むので、最後の最後までページをめくる速度を落とすことはありませんでした。

 

読み終わってから、なるほどねぇ・・・とはなるのですが、人ってこんなもんなのかというがっかり感もあったりして、どうにもスカッとする話でなかったので、万民が読んで良いと感じるかどうかは分かりません。

 

審判 (徳間文庫)

審判 (徳間文庫)