あじゃみんのブログ

美味しいものや、経営する雑貨店のこと、女性の心身の健康について、その他時事ネタなど好き勝手に書いているブログです。

火車 - 身につまされる社会派ドラマ -

飛行機の中で見た韓国映画火車(화차)」が、わりと良く出来ていたこともあって、宮部みゆきファンであって、今まで敬遠していた本を読んでみることにしました。

未読の方もいらっしゃると思うので、あまり詳しく内容を書くわけにはいきませんが、なんとも身につまされるというか、読んでいて辛くなる話でした。

 

初版(単行本)が平成4年であるため、今から20年前の話です。


この話には、クレジットや消費者金融などの多重債務者が出てくるのですが、今とは貸金法などこの手の法律も大きく変わりましたから、この中の状況が今でもまったく同じということはありません。

 

ただ、誰でもが陥る「落とし穴」的なところは、法律が変わってもあまり変わってはいないような気がしました。

貸金法が変わって、クレジットカードのショッピングは関係ないといっても、自主規制なのか条件を満たしていてもカードが作れなくなったりと、ちょっと過剰な対応も目立ちますが、今のようになって良かったのかもと思いました。

多重債務者といっても、この本で投げかけた問題点については、分かるところがあります。


一時、ニュースなどで問題になった非情な取り立てで自殺者を出したり等、悪質な業者に捕まって逃げられない人は、ギャンブルやなにか自業自得で借金をしたというよりも、別途やむにやまれぬ事情があり、それに付け込んだ闇金業者の餌食になってしまったというのも多いようです。

 

この本の中にも、そういう「自己責任」だけでは語れない人々について社会が整備しなくてはならない問題点を鋭く突いていました。

推理小説でありながら、「理由」と同じように、その時の社会が抱える問題点をうまく作品に取り込んでいて、読んでいる者を飽きさせません。

 

【あらすじ】

事件の際に受けた傷のために休職している刑事・本間俊介。
ある日、死んだ妻の親戚の栗坂和也から「突然消えた婚約者・関根彰子を探して欲しい」と頼まれる。

結婚してから何かと必要だからと、和也は彰子にクレジットカードを作るように勧めたが、手続きをしてみたら彼女が破産していたことが分かり、そのことがきっかけでいなくなってしまったのだという。

 

「休職中なので警察の力は使えない。だから、あまり期待しないでくれ」と言って始めた捜索だったが、次々と出てくる「黒い闇」を目の当たりにし、引くに引けなくなってしまう。

果たして、彼女はなぜ婚約者から逃げなければいけなかったのか・・・。

 

山本周五郎賞受賞作

 

【映画との違い】

 

韓国映画火車」は、シチュエーションなどは、結構忠実に原作を再現していましたが、消えた女性を捜索するのは婚約者という設定です。

退職した刑事(このパターンは韓国映画に多いような気が)の力を借りて、そこまでする?ってくらい一生懸命探すんですよね。

でも、原作では「消えた婚約者を探して欲しい」と頼んでおきながら、ほとんど登場しません。

 

映画でこのパターンにならなかったのは、これだと韓国映画お得意の色恋沙汰になりようがないため、女に逃げられた男という設定にしたのだと思います。

 

火車 (新潮文庫)

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映画もなかなか良かったですよ。
最後がちょっと・・・でしたけど、観る価値はありです!

火車  HELPLESS [DVD]

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