ベニチオ・デル・トロって、普段「この人ってどうよ?」って感じで、別にどうとも思わないんですけど、映画というか役になってスクリーンに映ると圧倒的な存在感なんですよね。
若い頃のチェを演じた時は、随分と体重を絞ったようで、今まで見たことないわ、こんなベニチオって感じです。
映画の最後でスタッフなどの名前の中に「ダイエット指導」みたいな人が出てきて、やっぱりそういう人が付いたのねと笑ってしまいました。
さて、そのベニチオ・デル・トロは、この映画「チェ 28歳の革命(原題:Che Part One Argentine)」でも、主役のエルネスト(チェ)ゲバラをまるで本物のように演じていました。
映画の中の若い頃のチェは、格好いいです。
(でも、監督いわく、チェ自体は本物の方が格好いいとのこと)
実物を見たことがないので、「きっとこの人のようだったに違いない」と思わせるだけの演技をしていたという意味ですが・・・。
映画の感想はといえば、人の人生を途中までとはいえ2時間ちょっとで描ききるのは無理があるのは分かるものの(端折ってあるところが色々あるみたいで)、フィデル・カストロとの出会いから、突き動かされて革命闘争に進んでいく様が丁寧に描かれていて、胸を打たれました。
腹を決めるとよくいいますが、本当に何かを成し遂げたければ、ここまでの決意が必要なんだと自分の人生の甘さを痛感したり。
まぁ、そうかといって、すぐに自分を変えられるかといわれれば、それは正直難しいけれど、チェのようにまっすぐな人が、今もって英雄として尊敬されているのはよく分かります。
決して、私利私欲ではない。
そこが理想を追い求めた彼と俗っぽい野心家との違いです。
アルゼンチンから来た医師が、キューバの悲惨な実情を目の当たりにし、フィデル・カストロに共鳴し、純粋に国のために戦っていくのです。
キューバ革命やその他南米等の歴史や思想などについては、これまで一方的な情報でしか知りえなかったことが、最近になってから徐々に紐解かれるようになってきて、歴史というのは学んで無駄ではないのだと痛感します。
よく「なんで古い時代のことなんて勉強しなくちゃいけないの」と言う若者に出会いますが、まさにそれぞれの時代を学ぶことで、より今の時代が見えてくるし、いつの時代に何があったというだけではなく、そこから学び取ることがたくさんあることに気づけば、歴史というものの大切さが分かるようになるのではないでしょうか。
革命後の国連での演説シーンなど、思わず引き込まれるシーンが随所にあります。
武力で何かを成し遂げることが良いとは思いませんが、いつの時代にもそれしかない、またその方法を使わざるを得ないという時代は確かに存在します。
カストロやチェの時代に力で民を圧迫していた政府を倒すには、その当時ゲリラ戦が功を奏したことが分かります。
とはいえ、カストロが「武力」だけで革命を遂行しようとしたわけではないこともこの映画を観ると理解できました。
共産主義って、正直言ってよくわからないというか、理解できない部分もたくさんありますが、本来「平等」を追い求めている思想であるはず・・・というのはなんとなく分かります。
でも、それが成り立たないのは、人間には欲があり、純粋に生きられる人ばかりではないことが証明しています。
チェが革命後にキューバを離れたのも、結局のところ革命への使命感とキューバ革命後の自分の地位を思うと、理想を追った彼の心情には合わないものがあったのだと思います。
まだ、世界には自分を必要としている国があるはず。
その信念に突き動かされて、チェはキューバを離れていくのです。
ソダーバーグって、なんじゃこりゃ?!って駄作を作ることがありますけど、エリン・ブロコビッチのような「リアルな人生」を描くのはうまいのかなぁ~と思いました。
第2部
チェ 39歳 別れの手紙
も楽しみです。
しかし、映画の邦題ってダサいのが多いのですが、今回のタイトルは、邦題の方がグッときます。
最後の最後に余談ですが、1970年代のフランスの一部を描いた「ぜんぶ、フィデルのせい」という映画があり、カストロに心酔して反体制運動にのめりこむ父親や、ウーマンリブ運動に目覚めた母親に振り回される娘の視点で、当時の時代背景が描かれていくのですが、見ていた時に、すべてが娘の視点なので、ちょっと時代背景が分からない部分もあったりしたので、この映画も観つつもう1回見直すと、また違った視点で見られるのかなぁ~と思ったりしました。
チェ 28歳の革命 画像・写真
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