病院で無駄足を踏まされたNさんは止まりません。
「医者といえばさ、うちの近所に旦那さんがどこかの大きな病院の医者って家があるんだけど、その医者がまたにこりともしない無愛想なやつで、近所で会っても普段は挨拶もしないのよ」
と、今度は自分の近所に住んでいるお医者さんのことを話し始めました。
「周りからも評判悪くてね、感じ悪いのひとことなんだけど、その奥さんが綺麗だし、明るくてめっちゃいい人なのよ」
「へぇ、またなんでそんな人がそんな感じ悪い男と?」
「そう思うでしょ?私も思ってたんだけど、以前その奥さんと話した時に聞いたのは、奥さんは元看護師で、病院で知り合って恋に落ちたんだって」
「あ~、ありがちありがち!」
知り合いに数人の看護師と医者のカップルがいる私は思わず言いました。
「だからその奥さんの方とは結構仲良くしてたんだけど、ある日離婚することになったって挨拶に来たのよ」
「結局、離婚しちゃったんだ」
「そう。でもね、それからしばらくしてから、その旦那と道で会ったんだけど、女の人と一緒だったからびっくりしてたら、なんと向こうから話しかけてきたの!」
「えっ?なんで?」
「それがさ、再婚したとか言って、こちらが妻ですよろしくお願いしますとか、思わず『挨拶できるんだ』って驚いたわよ」
「えー、じゃぁ、離婚の原因てそれじゃないんですか?」
「そうですよー」
私とLちゃんの意見にNさんは「うーん、でもまぁ、結構間はあいてたと思うけど」というので「そんなの世間体があるからすぐには籍入れないでしょー」とふたりで突っ込みました。
「そうかなぁ~。それよりさ、前の奥さんはあんなに明るくて感じ良かったのにって思うくらい、今度の人はなんか“生きてます?”って聞きたくなるくらい生気がないの」
「へぇ・・・人の好みって分からないもんですね」
「ホントねぇ・・・・」
「まぁ、医者にも色々いるから、今度は患者だったりして」
「どうかねー」
「あのー」
その会話が途切れそうになった瞬間、Lちゃんが身を乗り出してきました。