あじゃみんのブログ

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更年期以降の女性の体と性を語る 第1回(連載5回)

はじめに

連載「ザ・更年期」症状編の最後に、“えっちな気分の落差に悩む”という章を入れました。 他は対策編を簡潔に書いていますが、この部分はとても大切なことなので、対策編ではなく、深堀形式で書いていきます。 長文になりますので、いくつかに分けて掲載していきますね。

私自身ももうすぐシニア割引の仲間入りをする年代になってきたこともあり、昔、散歩の途中でふらりと立ち寄ったBOOKOFFで、発売当初に話題になった岸恵子さんの小説『わりなき恋』を見つけ、途中まで読んだことがきっかけで、当時は気にしなかった高齢女性の性について、年齢を重ねた今あらためて考えるようになったからです。

この作品は、「いい歳をした大人」が愛だのセックスだのを語ることに世間が抱く“なんか恥ずかしい”もしくは”いい歳をしてみっともない”という感覚を無視して、これでもかというほど赤裸々に描いたことで注目されました。直接的な描写はそうないようですが、たぶん高齢女性が感じる”あるある”的なところが読者にウケたのかもしれません。

「わりなき」という言葉は「分別がない」「道理に合わない」という意味で、作中では年齢を重ねた女性が抱える“身体的な痛みや性行為時の困難”(膣の乾燥や性交痛など)をリアルに描写し、性愛の喜びと苦しみの両面が浮き彫りになっています。岸恵子さん自身も「主人公はほぼ自分」と語っており、彼女の人生経験や恋愛観が色濃く反映された作品でした。

具体的には、もうすぐ70歳を迎える主人公・伊奈笙子(いなしょうこ)が、飛行機のファーストクラスで偶然出会った年下男性と恋に落ち、その関係を赤裸々に描いています。特に、年齢からくる症状で性交がうまくいかず、婦人科医に相談する場面は強く印象に残りました。 医師はプロとして淡々と対応し、なぜそんなことが起こるのかを説明します。

 

「女は閉経の後、ま、早くいえば水気がなくなります。それでも女として十分潤っている人もいれば、そんなことに関心さえない女性の場合は、分かりやすくいえば干上がってしまうんです」

 

医師はそんなふうに淡々と言い放ちます。 この場面は、さらっと書かれているのに、読者には“年齢を重ねた女性の体の変化とセックス”というテーマが真正面から突きつけられるのです。 小説全体の中ではほんの一部の描写にすぎませんが、だからこそ、生々しい現実として強く迫ってきます。

…とはいえ、当時、私が読んだのはこの辺まで。理由は、主人公がファーストクラスに乗るようなセレブで、すらっとしたスタイルはまるで40代にしか見えず、日本と外国を行き来してバリバリ仕事をこなすキャリアウーマン。お相手の男性は10歳ほど年下の世界を飛び回るビジネスマンで、妻子がいながらも笙子にぐいぐい迫る…という、私には到底ない世界であまりにも非現実的だったからです。普段いわゆる恋愛小説を一切読まないこともあり、どうしても感情移入できませんでした。

それでも、この小説をきっかけに、若い頃には考えもしなかった高齢女性の性について、今回は大まじめに書いてみようと思います。

わりなき恋にはならずとも

主人公が病院で何を説明して相談したのかは書かれていませんが、その後、医師はホルモン剤と固くなった皮膚をやわらかくする薬を処方し、「大丈夫、すぐに治ります。誰もが経験するごく普通のことです」とやさしく微笑みます。 ただ、実際にはすぐ治ることはなく、笙子は少し焦ります。

相手の男性は「あなたの中に溶けて入り込み、ひとつになりたい。絶対に離れられない一つの心と体になりたい」と熱く語ります。笙子はその希望に応えたいと思うものの、長い間ケアをしてこなかったこともあり、医師が言う“個人差”が自分にどう当てはまるのかという不安を抱きます。 本当のところ、笙子自身には性的な興味や欲望はほとんどなく、ただ久しぶりに好きになった相手の思いに応えたい一心で「なんとかしたい」と思っていただけなのです。 これって、かなり切ない話ですよね。

誰かと出会って「わりなき恋」にはならずとも、いつまでも女性として健康でいるためには、デリケートゾーンをケアすることはとても大切なことなのです。

個人差

小説の中で医師は、高齢女性の体の変化について「個人差がある」と短く語ります。 それは、女性の場合、カップルとして健全な生活をしていても、50代で子宮や膣が委縮して潤いがなくなる人もいれば、70代を越えても豊かさを保つ人もいる。かと思うと、膣の皮膚が薄くなって性交時に出血する人もいる――そんな幅のある現実です。 そこで、実際の40代以上の女性の体の変化について、調べてみました。

 

  • 閉経の平均年齢:日本人女性はおよそ50歳前後。
  • 更年期症状の発現率:40〜50代女性の約8割以上が「体の不調」を感じていると回答。
  • 典型的な症状:のぼせ・ほてり、動悸、異常な発汗、膣の乾燥、性交痛、尿失禁など。
  • 膣や子宮の変化:閉経後はエストロゲンの急減により膣粘膜が薄くなり、潤いが減少。性交時に痛みや出血を伴うケースもある。
  • 個人差の幅:一方で「ほとんど不調を感じない人」も一定数存在し、症状の重さや種類は人それぞれ。

 

こうしたデータを見ると、医師が語った「個人差」という言葉は決して大げさではなく、むしろ現実そのものだと分かります。 若い頃から性的なことには個人差がありますが、更年期以降の女性は閉経によって”子供を産む”という機能がなくなる分、それに関連した臓器やホルモンの状態が一律ではなく、本当に千差万別な個人差があるのです。

男女の差を紐解くと

更年期以降の男女の心身の変化には、明らかな違いがあります。男性はテストステロンが20代をピークに徐々に減少し、40代以降になると性欲の低下や気力の減退が目立つようになります。さらに60歳を過ぎる頃には筋力や免疫力の衰え、生活習慣病のリスク増加などが重なり、いきなり「ガクッ」と老け込む人も少なくありません。

一方、女性は閉経を境にエストロゲンが急激に減少します。

その結果、膣の乾燥や性交痛といった身体的な変化が起こりやすくなるほか、皮膚のハリを保つ力が弱まり、シミやしわが増える人もいます。とはいえ、相対的に男性ホルモンの影響が強まるため、性欲が高まる人もいて、「減る人」「増す人」の両方が存在するのが特徴です。

ザ・更年期で、60代や70代の女性が婦人科医に「自分はもうしたくないのに求められて困っている」と悲痛な相談に来ることを書きましたが、まさにこの男女差からくるミスマッチとも言えますね。

もちろん、女性が性欲旺盛で男性にその気がないという例も少なくありません。

レスに悩む男女も多いのですが、お互いに歩み寄りがない場合は本当に頭の痛い問題です。 そのお気持ちだけは、医者にもどうにもできません。

以前、10年以上もレスに悩んでいた女性から直接話を聞いたことがありますが、昔、夫を誘ったら「お前頭おかしいんじゃないか」と言われてショックを受け、それ以来まったく誘えなくなってしまったという話で、そんな酷いことを言う人がいるのだと驚きましたが、それ以外は夫婦仲は良く見えていただけに人はわからないものだなと思ったのを覚えています。

しかし、この小説のように「自分には性欲はないけれど、相手に応えたいから病院に行く」という人はどのくらいいるのでしょう。

実際、「もう嫌なんです」と医師に相談する女性がいる一方で、応えてあげたいと思って受診する人もいるのかもしれません。

私なら面倒くさくて「もう、別の人としてください」と言ってしまうかもしれません。 けれど、世の”したい”男性には「奥さんが大好きで、奥さんとしたいから」という人も多いと聞きます。

そんな夫やパートナーがいる人はうらやましいと思う一方で、「もういい加減にしてよ」と感じる人にとっては、これは苦痛以外のなにものでもありません。

こんな風に、男女ともにホルモンの動きだけでなく、生活環境や心理的要因も絡み合うため、更年期以降の心身の変化といえども一律には語れないのです。

※補足:

テストステロン … 男性ホルモンの代表。筋肉や骨格を維持し、性欲や活力を支える。加齢とともに緩やかに減少。

エストロゲン … 女性ホルモンの代表。妊娠・出産に関わるだけでなく、肌や血管、膣の潤いを保つ。閉経を境に急激に減少し、皮膚のハリ低下やシミ・しわの増加にもつながる。

 

※シリーズ全般を通して調査結果などを基に書いています。すべての方に当てはまる内容でないことはご了承ください。