少し前に、ニンゲンTVで「津山三十人殺し」について偶然の取材回を観ました。
番組では、犯人が自殺した場所に今も霊となって留まっているという話が紹介されていました。世間一般では「肺病が原因で村八分にされ、孤立した都井睦雄が、自分に冷たくした人々を殺害した」という説が広く知られています。
しかし、番組に出演した霊能者の見解では「都井睦雄は嘘つきで、実際には健康体。同情の余地はない」と語られていました。
メンバーシップに入ればさらに詳しい解説が聞けるようですが、課金してまで追う気はなかったので、詳細は分かりませんが今までのイメージを一新するような内容だったようです。ただ、メインパーソナリティーの原田龍二さんが別のネット番組に出演した時にこの津山三十人殺しのことが取り上げられ、そんな内容の話をさらっとされていたのですが、やはりこの事件を取材したりした人からは、「村人の中では”むっちゃん”と呼ばれていて、同情している人もいたから、そこまでの人かどうかはわからない」という意見も出ていました。
今回、昔に観たドキュメンタリー番組の記憶もあり、改めて事件について調べてみることにします。深掘りは別記事にまとめるとして、まずは事件の大まかな概要を書いていきます。
第1章 事件の概要
発生日時:1938年(昭和13年)5月21日(土)午前1時40分頃から午前3時頃まで
場所:岡山県苫田郡西加茂村行重(現・津山市加茂町行重)
犯人:都井睦雄/とい むつお(当時21歳)
犠牲者:死亡30名(即死28名+後に死亡2名)、負傷者3名
凶 器:猟銃(散弾銃)、日本刀、斧、短刀・あいくち(匕首)
犯行時の服装
- 詰襟の学生服:黒いセル生地の詰襟服を着用。軍人風の装いで、動きやすさと威圧感を兼ね備えていた。
- 脚絆(ゲートル)と地下足袋:ズボンの裾を固定し、足場の悪い農村の夜道でも機動力を確保。地下足袋は接地性が高く、静かに歩ける。
- 腹巻と下着:防寒や防具の意味合いもあり、春先の夜に備えていた。
- 鉢巻に懐中電灯を固定:両側に小型懐中電灯を取り付け、さらに首からは大型のナショナルランプを吊り下げて周囲を照らした。遠目には「三つ目の怪物」のように見えたという証言もある。
凶器の携行方法
- 散弾銃(ブローニング・オート5):延長弾倉を装着し、9連発に改造。肩から弾薬袋を斜めに掛け、約100発の実包を携行。
- 日本刀1振と匕首(あいくち)2本:左腰に差し込み、革の帯でしっかり固定。揺れないように工夫していた。
- 斧:祖母を襲撃する際に使用。音を立てないため、銃や刀よりも最初に選んだとされる。
- 雑嚢(リュックのような袋):弾薬や小物を収納し、肩から掛けていた。
犯行後:都井は犯行後に山中で遺書を残して自殺し、被疑者死亡により不起訴となった
第2章 都井睦雄の生い立ち
- 1917年生まれ。幼少期に祖父・父・母を結核で失い、祖母に育てられる
- 学業成績は優秀で勤勉と評されるが、肺の病気や病気に対する偏見により孤立
- 徴兵検査で「丙種合格*1」と判定され、現役兵としては採用されず、村で差別や冷遇を受ける
第3章 村との関係と孤立
- 結核による差別、家督相続問題、女性関係のもつれが背景
- 当時の農村には「夜這い」の習慣があり、都井も複数の女性と関係を持ったが、病気や丙種合格(実質不合格)を理由に拒絶されるようになる
- 孤立と恨みが募り、破滅的な決意へと傾いていった
第4章 犯行の準備
- 一度は警察によって没収された猟銃や日本刀を再入手し、毎日射撃練習を行う
- 犯行直前には遺書を複数残し、「殺した後は神に命を捧げる」と記す
- 電柱に登り送電線を切るなど、周到な準備をしていた
第5章 犯行の経過
- 1938年5月21日午前1時40分頃、民家11軒に侵入
- 猟銃・日本刀・斧等を用いて住民を次々に襲撃
- 約1時間半で30名が死亡、村の人口の約25%が犠牲となった
(事件当時の村人口は約111人であり、村の人口の約27%が一夜にして失われた。)
第6章 事件後の影響
- 犯人は山中で自殺、事件は「津山三十人殺し」と呼ばれるようになる
- 明治維新以降、日本犯罪史上最多の犠牲者数を記録(戦争行為を除く)
- 2019年の京都アニメーション放火事件まで81年間破られなかった
- 横溝正史『八つ墓村』や西村望『丑三つの村』のモチーフとなり、文学や映画にも影響を与えた
第7章 事件の考察
背景には「病気による差別」「男女関係のもつれ」「社会的孤立」が複雑に絡み合っていた。現代の「無敵の人」現象とも通じる点があり、孤立と偏見が悲劇を生んだ例として語り継がれている。
まとめ
津山三十人殺しは、個人の孤立と社会的偏見が極端な形で噴出した事件でした。
単なる大量殺人ではなく、当時の農村社会の習慣や差別構造を映し出す鏡でもあります。ニンゲンTVでは都井睦雄を“悪人”として描いていましたが、詳細編では彼の生い立ちや犯行の背景を丁寧に追い、事件の本質に迫っていきます。
参考サイト
*1:徴兵検査での判定区分の一つで、現役兵には不適格とされ補充兵などに回される判定。社会的には「兵役に行けない者」と見られ、差別の原因にもなった。