あじゃみんのブログ

美味しいものや、経営する雑貨店のこと、女性の心身の健康について、その他時事ネタなど好き勝手に書いているブログです。

返校 言葉が消えた日(2019)

Youtube公式で映画の配信をするチャンネルができました。

CMはありますが、無料でも結構多様な映画が配信されているので、ご紹介します。

今回は、ホラーですが、歴史的な背景など考えさせられる部分の多い台湾映画「返校 言葉が消えた日」です。蔣介石による独裁・恐怖政治が行われていた台湾を背景に禁書を読み合う教師や生徒が異次元の世界で化け物に追われる映画です。

舞台は、1962年 蒋介石率いる国民党に統治された台湾

返校 言葉が消えた日(原題:返校/英題:Detention)は、2019に台湾で制作されました。

日本公開は、コロナの流行もあって、少し遅い2021年7月30日です。


映画の舞台は、1962年の台湾です。
日本の年号でいえば、昭和37年にあたります。

敗戦

映画自体の時代背景を語る前に、台湾の近代史、日本の敗戦から蒋介石が台湾を統治するまでの流れを見ていきます。1945年(昭和20年)、日本は無条件降伏を求めたポツダム宣言を受諾して敗戦し、台湾は中華民国に「返還」されました。蒋介石が派遣した官僚や軍部によって台湾は接収され、実質的な統治が始まります。ただしこの接収は、法的な返還ではなく、軍政的な管理の開始にすぎず、国際法上の帰属は曖昧なままでした。
1949年(昭和24年)、国共内戦に敗れた蒋介石は台湾へと実質的に亡命し、台湾を中国の一部として統治する体制を築きました。一方、共産党は中華人民共和国を建国します。蒋介石はなおも中国本土への「反攻」を掲げ続け、台湾の独立を認めることはなかったとされています。

二・二八事件

1947年(昭和22年)には、国民党が実質的に台湾の統治を開始していたわけですが、2月28日にいわゆる「二・二八事件」が起こります。
これは、前日の2月27日、台北市の円環地区で、台湾人女性が政府の専売制度に違反してタバコを販売していたところを取締官が摘発したことがきっかけです。取締官たちは、女性に暴力を振るい、周囲の市民が騒然となりました。
そして、その場で取締官が群衆に向けて発砲し、見物人が死亡。この出来事が市民の怒りに火をつけました。
翌2月28日、台北市庁舎前に市民が集まり、女性への暴力と政府の腐敗に対する抗議デモを開始しましたが、 デモ隊に対して政府側(憲兵隊)が発砲したことにより、事態は一気に緊迫化し、抗議は台湾全土に拡大します。 蒋介石政権は、中国本土から軍隊を派遣して鎮圧し、これによって数千人から数万人規模の市民が殺害・逮捕され、知識人や学生、教師などが標的となりました。
この事件をきっかけに、台湾では戒厳令が敷かれ、白色テロ*1の時代が始まります。

戒厳令下の台湾

戒厳令下の台湾では、言論や思想の自由が厳しく制限され、政府に批判的とみなされた言動は密告や逮捕の対象となりました。学校も例外ではなく、教育現場では検閲が行われ、特定の書籍や思想に触れることが危険とされました。
教師や生徒が「不適切な本(禁書)」を持っているだけで拘束されることもあり、言葉を使うこと、記憶すること、考えることが命に関わる行為となっていったのです。
映画『返校 言葉が消えた日』の舞台となる1962年は、まさにこうした沈黙と緊張が支配する時代でした。

映画の中では、教師と生徒が密かに禁書を読み、写本を通じて言葉を共有しようとする場面が描かれます。これは、沈黙を強いられた時代において、記憶や思想を守ろうとするささやかな抵抗のかたちでした。
しかし、こうした行為は政府にとって「反体制的」とみなされ、教師が突然拘束され、どこかへ連れて行かれるといった出来事も起こります。誰もが口を閉ざし、何が起きたのかを語ることすら許されない空気の中で、言葉は徐々に姿を消していきました。
『返校 言葉が消えた日』は、そんな時代に生きた人々の「声なき声」に耳を傾ける物語です。沈黙の中に埋もれた記憶と、消された言葉の重みを、私たちは今、静かに見つめ直すことができます。
この映画はホラー映画でありながら、台湾の黒い歴史の一端をそっと映し出しています。恐怖の奥にあるのは、語ることを許されなかった人々の記憶。

原作はアドベンチャーゲーム

映画の原作は、2017年に台湾で発売されたホラーアドベンチャーゲーム『返校(Detention)』です。
監督であるジョン・スー(徐漢強)氏は、「最も恐ろしいのは幽霊ではなく、現実に起きた恐怖だ」と語り、白色テロの記憶を若い世代に伝えるためにこの映画を制作しました。
かつて言葉を奪われた人々の記憶に、今、私たちはどう向き合えるのでしょうか。
『返校 言葉が消えた日』は、恐怖映像の中にも、そんな問いを私たちに投げかけてきます。

あらすじ

翠華高校の女子生徒ファン・レイシンは、ある夜、無人の校舎で目を覚ます。やがて彼女は、政府に禁じられた書物を密かに読む「読書会」のメンバーである男子生徒ウェイと出会い、共に出口のない悪夢のような校舎をさまようことになる。現実と幻想が交錯する中、二人はかつて起きた密告と粛清の真相に迫っていく。
物語は、ファンの罪と贖罪、そしてウェイの記憶と再生を軸に、言葉を奪われた時代の痛みと希望を浮かび上がらせます。

 

R15+のため、Youtubeでしか観られません。

 

『返校 言葉が消えた日』が称賛された理由とは――

*1:戒厳令下での思想弾圧や政治的迫害を指す言葉。