愚行録は、2017年公開の妻夫木聡、満島ひかり主演の映画。
前から観たいと思っていた映画ですが、原作が貫井徳郎だというので、これはもうジメっとした暗い映画だということは分かっていたから、原作未読とはいえ躊躇してしまっていたのです。
最近観た紹介動画かなにかでお勧めされていたのもあり、思い切って観ることにしました。
あらすじ
週刊誌のライターである田中武志は、1年前に起こった田向浩樹一家殺人事件を追って特集記事を書きたいとデスクに希望し、上司の岩田が「今時一年前の事件なんて誰も関心がない」というのを遮って、デスクは「出来次第だから掲載は確約できない。それでもいいなら」という条件つきでOKした。
岩田が「そんな甘いこと言うなんて」とデスクに呆れたようにいうと、「甘くもなるよ」と言って、田中の妹が自分の子供に食べ物を与えず、幼児虐待で逮捕された記事の載った新聞を岩田に見せた。
拘置所にいる妹の光子に弁護士と一緒に面会し、差し入れの服を持ってきたという武志に光子は「私、秘密って大好きだから」と笑って話すのだった。
その後、武志は、田向浩樹とその妻友希恵の大学で交友のあった人々にふたりがどんな人物だったのかをインタビューして回る。
同じ大学出身で会社の同期だった渡辺は「あんないい奴が」と言って泣いたが、話の内容は会社の女性をふたりで弄んだという笑えないエピソード。
その後、友希恵とも仲の良かった人たちにも話を聞いていくのだが、そこで語られる話は、人の表と裏の面を象徴するようなエピソードばかりだった。
田中の妹光子の事件と一見まったく関係ないように思える田向一家殺害事件が平行して進んでいくのだが、そこには恐ろしい結末が待っていた。なぜ田中は「そんな事件をいまさら」と言われたこの事件を追っていたのか、拘置所で光子の言っていた「秘密」とはなんだったのか、真実が見えてきた時、戦慄が走る・・・。
愚行録とはなんだったのか(ちょっとだけネタバレあり)
辞書によれば、愚行とは「考えの足りない、ばかげた行い」とか「 愚かで不適切な行動。常識に反する行為」のことですが、この映画の愚行とは、それに嫉妬や見栄、道徳的な失敗や虚栄心や現実逃避なども含んでいるのです。
始めは、武志がそれぞれに取材に行くのに「犯人像を暴く」みたいな目的があってやるのだろうなと思いながら観るのですが、場面が進むにつれ、小さな違和感がだんだんと大きくなっていきます。
武志は「田向一家殺害事件」を追う・・・と言っているわりには、会社の友人や大学時代の友人たちなど関係者へ話を聞いても、出てくる話はその話者たちが田向とのちに妻になる友希恵をどう見ていたかを延々と聞かされることになります。
とても殺人事件の犯人像に迫るような取材とは思えず、いったいこの記者は何をしたいのか・・・という疑問を持ちながら画面を見続けることになるんですよね。
ひとりひとりが語る田向浩樹と友希恵の”愚行”、そして自分たちの愚行を観客の目の前にさらけ出していくことになります。
光子と武志の人生とこの田向たちの人生とは、一見、なんのつながりもないように見えるのですが、最後の最後で繋がっていきます。
そして、観ている者は、武志の取材の本当の意味を知ることになります。
とはいえ、光子と武志の「秘密」も武志の取材の本当の意味・・・だと感じたことも実際には語られることはありません。
観た人それぞれが考えるようになっているのです。
妻夫木聡も良かったけど、満島ひかりの演技は圧巻でした。
武志は、弁護士に勧められて光子の精神鑑定を受けさせることになるのですが、その部屋で語られる”真実”に愕然とします。
でも、実際には医師は別のところにいて、光子はひとりでその恐ろしい内容を喋っていたのです。
このシーンは、本当に満島ひかりの演技に見入ってしまいました。
田向一家を殺した犯人は逮捕されるのかどうか・・・かなり微妙なのですが、どこかで「捕まらないで」と祈る自分もいました。
どんな理由があっても殺人なんてダメなんですけどね。やっぱり人としてこのクズどもをどうにかしたいみたいな感情もちょっと芽生えてしまうのですよ。
それぞれが犯した愚行を淡々と記録していく、愚行録。
とっても恐ろしい映画でした。
正直言って、展開が斜め上を行く感じで、都合良すぎやろ!って突っ込みどころも大いにあったのですが、なんだか結構引き込まれてしまって、あっという間に終わった映画でもありました。
予告編を貼りつけようかと思ったのですが、正直ちょっとネタバレ気味で、見ないで鑑賞して欲しいのであえて貼るのは止めました。
Amazonプライムで配信中。
監督:石川慶(長編映画デビュー作)
原作:貫井徳郎の同名小説(第135回直木賞候補)
脚本:向井康介
主演:妻夫木聡(記者・田中武志)、満島ひかり(妹・光子)
上映時間:120分
