①から読んでね。
※本を読んだり、実際に試したりしたことを書いていますが、私は医師ではないため、病気治療にこれが絶対だというつもりでは一切ありません。アルツハイマー型認知症は病気です。適切な医師の診断などが必要ですので、あくまで「こういうこともあるんだ」程度に読んでください。また、どんなことにも例外はあるので、すべての人に当てはまっている話でもありませんので、その点はご了承ください。
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アルツハイマー病の治療
映画「明日の記憶」を観て以来、アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー)にはなりたくないけど、予防するにはどうしたらいいんだろう・・・とか、そんなことを考えながらも、「なったら大変だよなぁ~」で終わってしまっていました。
不治の病という認識については、たぶん日本人(の一般人)でアルツハイマーを知っている人だったらほとんどがそう思っていたのかもしれませんが、実は映画の頃にはすでに色々と研究は進んでいたのです。
治すところまではいかなくても、進行を止めたりする薬はできないかという段階だったと思うのですが、私のような素人でアルツハイマーの人が特に誰も周りにいなかった人間には、知る由もなかったわけです。
アルツハイマーが”ボケ”の原因で多くを占めるとわかってきてから、だんだんとテレビでも取り上げられたり、あれこれ書籍も増えてきました。
治療薬のことも報道されるようになったりと、徐々にアルツハイマーの治療という部分が脚光を浴びてきました。
新薬の恐ろしさ
治療するといっても、実際には薬で進行を抑える程度の話で、あまり大きな成果をあげた話は聞こえて来ず、調べてみると治療薬を飲んで逆に症状が進んでしまったという声も出てくるようになりました。
専門医の中には、治療薬を飲まない方が良いという人もいたりして、実際に使っていた患者の家族が「うちも〇〇を飲んでいましたが、症状がひどくなったのでやめたら改善しました」という人もいて、新薬は見極めが難しいと思ったものです。
これだけ大勢が困っている病気ですから、なんとか早くということで、実際に治験で有効な結果が得られたのかも疑わしいものが世に出回っているのではないかと勘繰ってしまいました。世の中には、決めたシナリオに沿った内容の試験結果ばかり集めて論文書くやつって結構いるんですよ。毀誉褒貶に一喜一憂し、自分の考えに固執する愚かな研究者が・・・。
光を求めて
アメリカの小児科医、メアリー・T・ニューポート氏の夫のスティーブさんが2001年、51歳の時にアルツハイマーにかかり、進行が早くやっとのことで見つけた新薬の治験には「症状が進みすぎている」という理由で参加できず、どんどん進んでいく夫の症状にいったいどうしたらと途方に暮れていたそうです。
スティーブさんはもともと快活な性格でユーモアもあり、メアリーさんが医師になる夢を応援し、忙しい日々でも子育てができるよう在宅の仕事をしたりとふたり二人三脚で人生を歩んでいました。
そんな夫が笑顔も消えた顔で、今まで普通にできていたことがどんどんできなくなり、会話もまともにできなくなっていくというのは、どんなにか辛かったと思います。
メアリーさんは、なんとか夫の病気を改善させる方法はないかと仕事の合間に色々な可能性を探っていきます。
アルツハイマーに有効と見られる新薬の治験にあたり、スティーブさんを参加させたいと応募しますが、症状が進み過ぎていたことで条件に合致せず、参加ができませんでした。新薬の治験では、プラセボといって、その薬だと言って渡されたものが、薬でもなんでもないものを渡されることもありますから、そちらのグループに入った時は、その分治療のスタートが遅れるというリスクもあります(誰がプラセボかは教えてもらえません)。しかし、彼女はあきらめずにスティーブさんが参加できそうな治験を探します。そして新たに2つの治験を見つけ、応募することにしました。
1つめはワクチンの治験で、その治験に応募した時、スティーブさんはその治験を受けられる条件を満たしていましたが、直接受けるテストの点数がかなり悪く、治験には参加できないと言われてしまいます。しかし、他の条件はすべて満たしているから、別の日に改めて来てはどうかと言われます。タイミングによっては、点数が良く出るかもしれないからと・・・。
がっかりして帰宅したふたりでしたが、メアリーさんはさらにもう1つの治験を見つけ、こちらも条件を満たしていることから、応募してみることにしました。
そして、1つめの治験のテストも再度トライして両方に参加資格を得られた場合、どちらを受けさせた方が良いか、調べてみることにしました。
偶然の発見 AC-1202
インターネットで色々なことを調べているうちに、偶然、アクセラ社という小さなバイオテクノロジー企業の開発した新薬AC-1202があることを発見します。アクセラ社のプレスリリースには、この薬でかなりの数のアルツハイマー患者の記憶が改善したと書いてありました。今まで調べてきた薬では、記憶の改善というキーワードなど出てきていなかったので、この言葉がメアリーさんの興味を引きます。
調べるとその薬の特許申請書が見つかり、その中にあったニューロンへのグルコースの輸送問題についての記述が目を引きました。ニューロンとは、脳を構成する神経細胞のことで、グルコース(ぶどう糖)は細胞の栄養源です。アルツハイマー患者はニューロンの特定領域へグルコースがきちんと運ばれず、その栄養源を利用できない、そしてそれは他の神経変性疾患、例えばALSやパーキンソン病なども同じであると書かれていました。
メアリーさんは以前、なにかの論文でもこのニューロンへのグルコース輸送の問題について読んだことがあり、それは普通細胞膜の表面にあるインスリン受容体がアルツハイマー患者には見当たらないというものでした。グルコースが細胞内に入るためには、ホルモンのインスリンが必要で、インスリンが細胞膜の結合することによって、一連の代謝作用が始まり、細胞内に入ったグルコースがやがてエネルギー分子であるATPに変換されます。細胞の機能や細胞の生命そのものにATPは欠かせないのです。
アルツハイマー患者は、このインスリンが働かないために脳の神経細胞にエネルギーが供給されないというインスリン障害があるため、アルツハイマー病を3型糖尿病と呼び始めている人もいるほどでした。その新薬の特許申請書の「発明」の部分では、ニューロンは、ケトン類もしくはケトン体と呼ばれるものも栄養源として利用できるという既に知られた事実に基づき、ケトンはグルコースとは別の輸送経路をたどるため、グルコースとインスリンに関わる輸送経路を迂回し、血中にこのケトンが存在することで、細胞内にケトンを送り届けることができ、ニューロンや他の神経細胞の死滅を防げるのではないかと考えたとの記述がありました。また、中鎖脂肪酸を含む食べ物を食べると一部が肝臓で代謝されてケトンとなり、血中に入ることも分かっています。
アクセラ社では、ほぼ100パーセントの中鎖脂肪酸からなるトリグリセリドオイルを摂取することで、脳の機能が改善できるのではないかと考えたようです。
MCTオイル
中鎖脂肪酸100パーセントのオイルをMedium Chain Triglycerides(MCT)オイルといいます。アクセラ社の治験では、アルツハイマー患者に20グラムのAC-1202(申請書によればMCTオイル)接種によって効果があらわれたとありました。この薬のみ与えたり、他の薬と併用したりと、色々なグループで治験を行いました。
また、6か月間の治験に参加した一部のグループは、その期間中ごくわずかしか進行が見られなかったそうです。報告書では、繰り返し様々な治験を繰り返したことが書かれていましたが、一貫して試験したものはMCTオイルでした。メアリーさんがこの報告書を読んでいる時は、このMCTオイルが市販されていることを知りませんでしたが、自身が研修中に未熟児の栄養補給にMCTオイルを使っていたことはよく覚えていました。
MCTオイルは、消化酵素の助けなしでも容易に吸収されやすく、乳児でも吸収できるため、今日でも広く使われています。
報告書を読み進めると、著者の余談としてMCTオイルはココナツオイルやパームオイルから抽出されると書いてあり、その後、MCTオイルやココナツオイルについて調べたところ、自然食品店などで売っているココナツオイルを約35グラム摂れば、アクセラ社の20gのAC-1202に相当することが分かったため、スティーブさんにココナツオイルを食べさせることにしました。結果的に、このココナツオイル(のちにMCTオイルも追加)生活で、かなりアルツハイマーが進行していたスティーブさんの症状は劇的に改善し、色々な要因で後退することもありますが、以前のように明るい性格が戻り、通常の生活を送れているそうです。何年もココナツオイルやMCTオイルを摂る生活を続けているそうですが、薬のように効かなくなるということはないようです。
※以下が詳細を記した書籍です。上記ではほんの一部をご紹介していますので、興味のある方は、ぜひご一読ください。
③につづく