前にも書いたかも知れませんが、小津安二郎監督の映画って、本当に面白いですね。
今回観たのは、1949年公開の「晩春」です。
ということは、64年前ですよ(さすがに生まれてないわ)。
この映画は、妻に先立たれた父と暮らす娘がお嫁に行くまでを描いた映画です。
大学教授の父・曽宮周吉(笠智衆)と婚期を逃しそうで心配されている娘・紀子(原節子)は、普通に仲の良い親子です。
日本の敗戦が1945年ですから、たった4年後に作られた映画ですが、さまざまな価値観の変化のあった敗戦後の日本においても、女性は結婚して当たり前という価値観はさすがに変わったわけではなく、仕事をして活躍する女性にも「じゃぁ、お小遣いには困っていないね」と語りかけるシーンなど、働くのは結婚するまでというのが常識のようです。
今だと決してないのでしょうが、父の友人で「おじさま」と慕う人が再婚することに対して「汚らわしい」と言って、娘さんが可哀想と感情をぶつけるシーン。
随分とストレートで、ちょっとヒヤヒヤする場面でした。
そのあと、そのおじさまは自宅に寄って紀子の父親と一杯やるわけですが、「紀ちゃんに汚らしいなんて言われちゃったよ」と言って大笑いします。
日本の家庭の日常が描かれているだけといえばそれだけなのですが、当時の価値観やら生活風景が非常に興味深く観られる映画で、父親の妹で紀子をなんとか結婚させようと頑張る叔母さん役の杉村春子さんがお見合いさせた紀子が返事をなかなかしないことについて、「相手の熊太郎という名前を気にしているんじゃないか」というので、兄と会話するシーンには大笑いしました。
結婚はしたいけど父親を残していく心配や、本当は好きだった人が別の人と結婚してしまうとか、今の時代でもあるような内容で、これは普遍的テーマなのかと思いながら観ていました。
特筆すべきは、紀子の親友のアヤ役の月丘夢路さんの美しいこと!!
日本の女優さんて、品があって本当に綺麗でしたねぇ。
あの時代にこんな綺麗な人がいたのかって思わず見とれちゃいました。
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧・小津安二郎
笠智衆(曽宮周吉)
原節子(曽宮紀子)
月丘夢路(北川アヤ)
杉村春子(田口まさ)
青木放屁(田口勝義)
宇佐美淳(服部昌一)
三宅邦子(三輪秋子)
三島雅夫(小野寺譲)
坪内美子(小野寺きく)