いや~面白かった!!
時代劇を劇場まで観に行くという感覚がなかったのですが、この映画は大スクリーンでこそ観る映画ですね。
1963年公開のリメイクということですが、やはり三池監督が撮っただけあって、アレンジは今風で見やすかったです。
ただ、昨今の人に媚びたような映画と違って、作り手側の意気込みみたいなものがちゃんと示されていたし、主要な役者さんたちがしっかりと存在感を示していたため、全体としてはどっしりとした作品に仕上がっていました。
殺陣シーンは、きっとグロいにちがいないと思いましたが、期待にたがわぬ[E:sign02]出来栄えで、ご飯を食べたすぐ後で見ない方がいいです(笑)
もちろんフィクションだし、アクション映画であり、エンターテインメント作品なので、細かい時代背景だの暗殺に加わる武士の心情(どうしてそこまでの思いを持ったのか)などなど、普通なら深く掘り下げてしかるべきところも、ばっさりと切り落とされていました。
そこが却って観やすくなった要因だと思いますが、そういうディテールにこだわりたい方には向かない映画だと思います。
後は、マイナスといえば「どう考えても無駄でしょ」ってシーンが数箇所存在することでした。
あるシーンなどは、ストーリーに何の影響もせず、そこがあったからといって、その後のシーンがより深まるというほどでもないし、失笑という雰囲気だったので、さすがに100点とはいきませんでした。
お笑い担当の彼の演技は、ちょっとねーという感じだったし。
もうちょっと上手い役者さんだったら印象も違ったかしらと思います。
2時間以上の作品なので、あまりお遊びは入れなくても十分見応えはあったと思います。
ストーリーは至ってシンプル。
将軍の腹違いの兄弟であり、暴虐の限りを尽くしている明石藩主・松平左兵衛督斉韶。
あまりの暴君ぶりに嫌気がさした家来が自分の命を賭して主君を諫言しようと幕府宛の手紙を残して切腹しました。
しかし、腹違いといっても自分の兄弟のことなので、普段の詳細を知らされていない将軍は「穏便に頼むよ」と特に何のお裁きもせず放置。
しかも、そんな酷いやつを翌年には老中に取り立てると言い出したから、斉韶に酷い目にあわされている人々は「これはいかん!国が滅びてしまう」と頭を抱えてしまうのです。
だけど、将軍が言ったことは絶対です。
武士の社会では将軍の上に人はいないわけですから、そんな人に逆らうことなど有り得ません。
でも、そうはいってもあんなのが老中になって政治の中枢を担うことになったらと思うとお先真っ暗、絶望に打ちひしがれます。
老中・土井大炊頭利位は、こうなったらどっかで殺してしまうしかないと暗殺を企てることにし、その役目を旗本・島田新左衛門に託します。新左衛門は、武士としての死に場所を探していたと、この一計に乗りました。
そして、賛同して集まった武士たちと、大ボケ明石君主を殺すべく、馬に乗って落合宿へ向かうことになりました。
侍ですから、どこかの国の殿様を暗殺したら自分も生きてはいられません。
最初から、「死ぬ」ことが前提の旅路です。
だから、13人しかいないのに300名はいるかもという相手に立ち向かっていけるわけです。
江戸幕府だのといっても、この時の設定は明治維新のたった23年前。
太平の世が長く続きすぎて平和ボケしている武士たちは、人なんか殺したことがない人がほとんどで、刀は飾りに過ぎない人ばっかりなわけです。
そんな中で「武士とは」「忠義とは」という命題が突きつけられ、「武士と生まれたからには」と大ボケ暴君を「命を賭けて守る」という明石側の武士たちも、自分たちは何も悪くないのに、この暗殺者たちと戦うはめになるわけです。
稲垣吾郎の明石藩主、いや、もうすごい。
常々、この人なんでこんなに演技が下手なんだろうと思っていたのですが、見直しました。
もう、これ以上ないってくらい嫌~な殿様になりきってくれて、吾郎ちゃん、あっぱれ!と叫んでシール貼りたいくらいでした。
また、その馬鹿殿を守る家来、鬼頭半兵衛を演じた市村正親さんの演技、やっぱりいいです。
武士の忠義とはと、何がなんでも主君を守ることに徹するその迫力。
目ヂカラMAXって感じです(笑)
そうかと思うと、最後の方のシーンで殿様が「自分が老中になったら」“あること”をすると半兵衛に告げるのですが、その救いようのないひとことに一瞬「えっ?」となった顔が忘れられません。
もう、上手い!のひとことです。
そして、やっぱり松方弘樹さんのような時代劇役者は、ちょっとダレた感じのところをしっかりと締めてくれていました。
釣りばっかりやってるわけじゃないのねと安心しました(笑)
そして、なによりも役所広司さんのこれ以上ないくらいの格好いい、そして安心して観ていられる素晴らしい演技に脱帽でした。
人が多くて書ききれませんが、山田孝之という役者さんは、これからが本当に楽しみな素晴らしい役者だと思います。
伊原剛志さんの鬼気迫る顔もよかったし、古田新太さんもいい味出していました。
その他、刺客の人数が多くて薄まってしまった人もいて、この人誰だっけ?と途中で分からなくなることもあったりして、先ほども書きましたがディテールもへったくれもないので、けなせるところもある映画でしたけど、細かいことは別にして、たまにはこういうハードな映画もいいんじゃないかなと大満足して帰途に着きました。
ぜひ、観てください。
十三人の刺客(2010)
役所広司(島田新左衛門(御目付七百五十石))
山田孝之(島田新六郎(新左衛門の甥))
伊勢谷友介(木賀小弥太(山の民))
沢村一樹(三橋軍次郎(御小人目付組頭))
古田新太(佐原平蔵(浪人))
高岡蒼甫(日置八十吉(御徒目付))
六角精児(大竹茂助(御徒目付))
波岡一喜(石塚利平(足軽))
石垣佑磨(樋口源内(御小人目付))
近藤公園(堀井弥八(御小人目付))
窪田正孝(小倉庄次郎(平山の門弟))
伊原剛志(平山九十郎(浪人))
松方弘樹(倉永左平太(御徒目付組頭))
内野聖陽(間宮図書(明石藩江戸家老))
光石研(浅川十太夫(明石藩近習頭))
岸部一徳(三州屋徳兵衛(落合宿庄屋))
平幹二朗(土井大炊頭利位(江戸幕府・老中))
松本幸四郎[9代目](牧野靭負(尾張家木曽上松陣屋詰))
稲垣吾郎(松平左兵衛督斉韶(明石藩主))
市村正親(鬼頭半兵衛(明石藩御用人千石))